書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

「ビブリア古書堂の事件手帖7」三上延

●本日の読書

・「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと」三上延/メディアワークス文庫

 

 ええっと、コレいつ読んだんだ……ブログ下書きが7月2日……。と云うことでちょいちょい読了した本は溜まっているのですが感想文書く体力的余裕がない日々を過ごしております皆様お元気ですか。

 シリーズ完結編です。今回のテーマはシェイクスピアの稀覯本。大変楽しく、そしてシリーズを締めるに相応しい終わり方でした。最終巻と言うこともありますが、前巻までの内容を把握していないと、本作で登場する人物が誰なのか、主人公たちに取ってどう云う関係の相手なのかが分からないので、シリーズ通読している人向け。通読している自分ですがあまり内容を覚えていなかったりするので、「○○の事件で世話になった」とか書いてあっても、はてどなたでしたっけ? ってなっていますけど(と毎巻書いている)。

 ざっくり粗筋。ビブリア古書堂の若く美しい店主、栞子さんの母で古書のためなら手段を選ばない篠川智恵子。彼女と浅からぬ縁を持つ久我山尚大が、亡くなる間際に智恵子に出題した稀覯本に関する試験問題は「色の異なる三冊の特装本のうち、本物は一冊だけ。手を触れずにどれが本物か当てたら、自分の古書店の跡継ぎにしてやる」というもの。智恵子はその申し出を断り、尚大の恨みを買ったことから今回の話が始まります。智恵子が「手を触れなくても見分けられる」と宣言した三冊の特装本はその後世界各国に散り散りになります。ある日、尚大の側近だった男がビブリア古書堂を訪れ、栞子さんと五浦大輔くんもシェイクスピア稀覯本の謎に巻き込まれていきます。

 相変わらず古書と稀覯本と古書店商売についての蘊蓄は豊富で読んでいて面白いです。シェイクスピアに限らず、過去に出版された本の作り方、それが今に残ってどのように古書市場で価値を出しているかなどなど。

 三冊のシェイクスピア初版本(ファーストフォリオ)に関する謎解きはそこまで込み入ったものではなかったのですが、わたし一つ最後まで分からなかったのが、篠川智恵子がどうして「手を触れなくても見分けられる」と言ったのかについて。最後までその謎については解明されていなかったと思うんですが、どうして分かるんだろう。

 もう一つ、完結作として良かったのが、栞子さんと五浦くんの関係に決着がつくこと。シリーズ読者なら大体の結末分かっていると思いますが、やはりきちんと結末を付けてもらえるのは大変嬉しいことでございますね。いや今回、内容について書き過ぎたな。

 

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| 国内ま行(三上 延) | 07:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
「2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム」勝間和代
評価:
勝間 和代
文藝春秋
コメント:自分の片付けモチベーションを上げたい。

●本日の読書
・「2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム」勝間和代/文藝春秋社

  経済評論家の勝間和代氏が、あるきっかけから汚部屋だった自宅を徹底的に断捨離してホテルのように美しくし、自宅が世界一快適な場所となり仕事の効率が上がり新しい恋人と出会えたことを綴った「片付け本」です。わたし自分が片付け下手なのでありとあらゆる片付け本を読み漁って知識だけはあるのですが、結局やらずにそこそこ散らかった部屋で満足して暮らしております。でも片付けてきれいなおうちに住みたい欲は消えていないので、こうして定期的に片付け本を読みたくなるのです。最近は片付けメソッドを読み尽くしたので、片付け実録(写真付きが望ましい)を読む方が好きです。

 本のタイトルは「勝間式」と謳っていますが、別に氏が新しく考案した片付けの方法が書かれている訳ではなく体験談が書かれている本ですので、そこのところは注意が必要です。タイトルでもう一つ言うなら「2週間」というのも「普通の家庭なら大体2週間で終わるだろうけれど、私の家は物が多かったので約一か月掛かった」とのことで、つまりは目安としての2週間です。1日目はここを片付けて、2日目はここを片付ける……などのスケジュール表は付いていませんので悪しからず。

 氏が片付けるきっかけになったのは「座らない!:成果を出し続ける人の健康管理」という本と Apple watch だったそうです。一時間に一度立って一分間動くのは体に良いという内容を読んで、活動量計が付いている Apple watch を使い始めたことが始まり。Apple watch は座り作業をしていたら一時間に一度「Stand」とアラートが表示され、自分がいかに動いていないかが見える化されることで運動についての意識が高まったそうです。

 そしてもう一つのきっかけは「よく眠るための科学が教える10の秘密」という本。良い睡眠を取るには自分の寝室を眠るための場所にするべきだ、という表記から、寝室を快適にするための片付けを始め、そこで寝室の収納が「破産ポイント」に達していると気付くのです。モノが出しっ放しになっている寝室、モノを収めようにもクローゼットは使われていないもので埋まっている、これは捨てなくてはいけない、と2時間で断捨離決行。そこから雪崩のように家の中の片付けが始まります。

 氏が家じゅうを片付けている最中に気付いたことがロジカルな言葉で書かれていますが、冒頭にも書いたようにわたしは今、人の片付け体験を読んで自分のモチベーションを上げたいという目的があったので、メソッドの習得よりもドキュメンタリーとして面白く読めました。

 

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| 実用書 | 23:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
「ロベルトからの手紙」内田洋子
評価:
内田 洋子
文藝春秋
コメント:表紙が好き。

●本日の読書

・「ロベルトからの手紙」内田洋子/文藝春秋

 足、歩く、歩みなどをテーマにした短篇エッセイ集。表紙の、くるぶしから羽の生えた今にも跳びそうな躍動感ある彫刻の写真が印象的です。

 相変わらず平易な言葉遣いながら的確で、腑に落ちる表現が多く見られる美文です。この文章の雰囲気は変わらず好きなのですが、なんだろう、初めて読んだ「ジーノの家」よりも描写に遠慮がなくなったと言うか、友人でもあまり好ましくないところはそう書くようになったというか、少しとげがチラ見えするような人物描写が多くなったかもなーと思います。ちょっと視点が意地悪というか皮肉っぽくなったと言うか。

 内田さんのイタリアでの生活で起こる出来事は短篇小説ような滋味と不思議な巡り合わせに恵まれ、読んでいて飽きません。三人の姉妹が弟を助ける「わたしたちの弟」や、表題にもなっている「ロベルトからの手紙」が余韻が強く残りました。

 

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| 国内あ行(内田 洋子) | 20:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
「惑星壊滅サービス」マリオン・ジマー・ブラッドリー
評価:
マリオン・ジマー ブラッドリー
東京創元社
コメント:Amazonだとダーコーヴァ年代記全部画像が死んでる

●久し振りの読書
・「惑星壊滅サービス」マリオン・ジマー・ブラッドリー著 中村融訳/創元推理文庫
 あー久し振りに本読んだ。しかもこの本、読み始めてから読み終わりまでにえっらい時間が空いたので、読書を再開したときに「これどんな話だっけ、ってかこの人誰だっけ(主要人物)」ってなことになってて、ってこれ感想と関係ないな。相変わらずカタカナ名前に弱くて誰が誰だか分からなくなっているのはいつも通りです(過去のダーコーヴァ感想文読んでも同じこと書いてあった)。
 ダーコーヴァ年代記六冊目です。でもまだシリーズ半分までも来ていない。しかし本国でこの本が発刊されたとき、作者のブラッドリーはこの本でシリーズを終わらせようとしていたとのことで、タイトルからもそれが伺われます。恒星間貿易が普通になっている時代、独立を保つ資源豊かなダーコーヴァを欲しがる投資家は多くいますが、ダーコーヴァは要請に応じません。ダーコーヴァを弱らせて交渉を有利に進めたい投資家の依頼を受け、「惑星壊滅サービス」が活動を始めます。自然災害や飢饉の誘発、指導者の暗殺などあらゆる手段を使って惑星を壊滅に追い込む「惑星壊滅サービス」に狙われたダーコーヴァでは、若き指導者レジス・ハスターが立ち上がります。っつかハスターさんこのシリーズでは非常に重要な登場人物でずっと指導者的立場にいるんだけど、このとき二十四歳くらいなの? 計算おかしくない? てゆうか能力高すぎるの? かっこよすぎる。
 レジス・ハスターはダーコーヴァの人的資源であるテレパスを集める号令を発します。そこに旧知の友でありシリーズ最初の巻「惑星救出計画」に登場している医師ジェイスン・アリスンの力を借り(勿論わたしは存在を忘れていた)、テレパスの能力分析と活性化の道を探り、熟練のテレパスとして「炎の神シャーラ」で若い娘さんだったデシデリア・レイニアーも再登場(勿論以下略)してレジス・ハスターやジェイスンに力を貸します。そしてダーコーヴァの中でも伝説の存在であったチエリという生き物も能力開発に力を貸し、全惑星総力を掛けて滅びに対抗する物語です。
 惑星壊滅サービスのキーパーソン、アンドレア・クロッスンという女性もダーコーヴァになにかしら縁があることを匂わせながら話は進みます。結末は正直「えっ、そんな感じで終わるの。それでいいの」と思わないでもありませんでしたが、シリーズの一区切りとしてはそれもありかと思います。シリーズ全体を俯瞰するのに、訳者の解説がすごく役に立ちました。

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| 海外(ブラッドリー) | 12:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
「できる人の仕事のしかた」リチャード・テンプラー
評価:
リチャード・テンプラー
ディスカヴァー・トゥエンティワン
コメント:合わんかった。

●本日の読書

・「できる人の仕事のしかた」リチャード・テンプラー 桜田直美 訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン

 ああー、選書を誤った。今のわたしに必要なことは書いていなかった。大掴みに言えば、会社で出世するためには見た目と動作を偉く見えるように飾り、社内の不文律には黙って従い、悪口と不正に与せず働けばいいよ、って話でした。まあ、そりゃ出世するでしょうね。

ただし、部長を狙うなら、部長の仕事ができることが大前提だ。ハイハイもできないうちから飛ぼうとしてはいけない。(168 ページ)

 だーかーらー! その「仕事ができるようになる」方法を知りたいのわたしは! 仕事ができることが大前提(ドヤ顔)じゃねーよ。どうすりゃ仕事上手く回せるようになるんか知りたいんだってば!

 てことでニーズとシーズが合いませんでした残念。

 

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| 実用書 | 19:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
「佐藤オオキのボツ本」佐藤オオキ
評価:
佐藤オオキ
日経BP社
コメント:同い年なんだよなあこの人。


●本日の読書

・「佐藤オオキのボツ本」佐藤オオキ/日経 BP 社

 ずっと「佐藤ナオキ」だと思ってた。「オオキ」だったとは。カタカナから受ける印象で思い込みが修正されないままずっと NIKKEI DESIGN の記事を読んでいたよ。

 本書はデザインオフィス nendo 代表として有名な佐藤オオキ氏の著書。デザイン業界に然程詳しい訳ではありませんが、ひととき佐藤可士和氏(カシワシ。音読したい日本語)が若手の先鋭だった印象がありますが、最近はこの方が有名になってきたように思います。と云うのはわたしが NIKKEI DESIGN の作り出すイメージに踊らされているだけかも知れませんが。代表的な仕事を挙げると、ロッテのガム「ACUO」のパッケージデザインした方です。

 本書の内容は、過去に著者が有名企業とタッグを組んで世に送り出した作品「に至るまでのボツ案」を収録し披瀝したものです。顧客たる企業に提示するモックアップの精度と完成度が高いです。そのまま商品に出来そうなレベルのものもあるように見受けられます。個人的な事情を申しますと、わたしは NIKKEI DESIGN を読んでおりましたんで同誌の情報から著者の代表的なデザインワークを一通り知っている上で読んでおります。故に初めて手に取る人よりは「あー、知ってる」感が強い。ロッテ ACUO も、早稲田大学ラグビー部の復興も、IHI のロゴだけポスターも、ACE の全方位から開くキャリーバッグプロテカも、omni7 も、by N も、関わってヒットしたこと知ってます。うん、一流だよなあ。わたしと同い年なのに。

 にしても最近は企業イメージも含めて「デザイン」の重要性が喧伝されておりますが、著者も含め、デザイン業界で力があるとされる方は大体が企業にがっつり組み込み、企業理念に基づいてゆがみを直したり起業本来のところに立ち返ったモノ作りの支援をしているように思います。顧客である企業を巧く動かし新しい価値観を産み、ある種の企業再生を果たさせるためには、トップの英断や顧客企業内のチームの結束力、やりきる力を引き出すことが必要です。nendo がそれをどうやっているかというと、精度高いデザインとそのモックアップ、あと己らが部外者であるとの割り切りから発想されるアイデアの数で勝負してるとのこと。勿論様々な事情でそれらはボツになっていくのですが、その一度滅びたボツ案が、アイデア検討の途中で復活したり、形を変えて生かされたりするのです。うーん、エキサイティングな感じ。

 企業再生の特効薬みたいな扱いの「デザイン」とは果たしてなんなのだろうとここ一年ほど考えておるのですが、単純にこのような有名企業の成功例を読んでいると「いいなあ」と思います。しかし個人的な身に立ち返るとやっぱり自分の扱う製品には色々と制約があって、果たしてこういった革新的な「デザイン」という嵐に巻き込まれた時に何が出来るのだろう、何が生み出せるのだろう、と考えて仕舞うんですね。うーん、悩ましい(超個人的な締め)。

| 実用書 | 01:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
「珈琲店タレーランの事件簿5」岡崎琢磨

●新年の読書

・「珈琲店タレーランの事件簿5 〜この鴛鴦茶がおいしくなりますように〜」岡崎琢磨/宝島社文庫

 シリーズもいつの間にか第五弾です。気付かぬ内に新刊が出ている。コンスタントで非常に宜しいですね。その調子でビブリア堂も新刊早く出て(著者違う)。四作目が番外編的短編集だったので、話が本道に戻ってきて欲しいとの希望が叶って良かったです。ちゃんとコーヒーの薀蓄あるし。サブタイトルにもなっている鴛鴦茶、飲んでみたいもんです。味の想像が出来ん。

 シリーズの中で一番良かったように思います。何が良かったって、構成。連作短編で章ごとに細かな謎を解きながらも通底する謎があり、それは語り手のアオヤマくんが中学生の頃にコーヒーの道を志すきっかけになった女性にまつわるお話です。全6章立てで、前半は思い出の女性、眞子の身の上に関する謎を探偵役の「純喫茶タレーラン」の童顔美人バリスタ・切間美星が着々と解いていきます。

 後半は眞子が傾倒する源氏物語が事件に絡んできます。大塚ひかり氏の逐語訳を読了した源氏好きのわたくしですからそこは「源氏の謎、どれほどのもんじゃい」と一般の人よりちょっと詳しいのを鼻にかけて読みましたが、源氏でも守備範囲外のことが謎に絡んで来ていたので全然分かりませんでした。

 本文に思わせ振りに差出人不明の手紙が挿入されていたり、ミスリードを誘うような記述があったりと、騙されないよう気を付けて読んでいましたが、切間バリスタと同じ速さで真相にたどり着くことは出来ませんでした、残念。

 正直に言うと、表現のそこかしこに肌に合わないところがあるんですが(分かりやすく言えば地の文がラノベっぽく感じる)、アオヤマくんと切間バリスタの関係も漸進しているようですし、シリーズ完結まで読みまする。

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| 国内あ行(その他) | 16:35 | comments(0) | trackbacks(0) |
「本屋さんで待ちあわせ」三浦しをん
評価:
三浦 しをん
大和書房
コメント:本屋さんの中心で愛を叫ぶ。

●本日の読書

・「本屋さんで待ちあわせ」三浦しをん/大和書房

  本年もお世話になりました。来年もどうぞ宜しくお願いいたします。ってもう年明けてんがな! 読了が 2016 年末だったので、年越し前に感想文書こうと思っていたのですが、大掃除していたら疲れ果てて眠って仕舞って書けませんでした。そんな感じの 2017 年ですがどうぞ宜しくお願いいたします(二回目)。つーか昨年は十月からこっち業務に勤しみ過ぎており全く記憶がなくて読書どころじゃなかったんだなあと昨年を振り返っています。ま、全て自分の至らなさとスケジューリング能力のなさ、全体観の欠如が原因なので……って感想文書いてるのに反省をし始めてどうする。この書評集を読んで改めて「ああ、本読みたいなあ、本っていいなあ」と思った矢先ですので、そっちの話を書かなきゃですね。

 小説が上手で読み巧者でもある小説家を挙げろと言われましたらわたしは川上弘美と三浦しをんを挙げます。書評のタイプにもその小説の文壇に於ける位置付けを評したり、表現の鮮烈さを本文を引きながら紹介したり、設定に対する文体を評価したり、着眼点の良さを褒めたりと色々あると思いますが、著者の書評は文章全体から「この本が好きだ!」と云う気持ちが溢れていて、読んでいると紹介されている本が猛烈に読みたくなります。人が全力で好きを叫んでいる作品が結局は一番面白いよなあ、うん。

 新聞だったり雑誌だったり発表媒体によって書評の文体と内容への踏み込みを巧みに調節している感じはありますが、この「すげーよこの目の付け所」とか「この美しい文章が」などの思いを、氏の思い出や身の回りのことを絡めて紹介してあるのが上手。わたしは本書を読んで、丸山健二の名前を「いつか読みたいボックス」に入れましたよ(因みにこのボックスには既に中上健司と吉本隆明と吉田篤弘と松田青子と木下古栗と岡田利規が入っている)。書評集としては二冊目と云うことで、前作の「お友達からお願いします」もいつか手に取ってみたいです。

 あとですね、後書きに書かれている「最近読んで面白かった小説と漫画」が一番面白かったです。ボーイズラブ作品への熱い思いが語られておりまして、本当はこの人これが一番書きたかったんじゃないかなあと思いました。ってゆーか三浦しをん、こんなに沢山の BL 作品読んでてしかも小説上手いなんてずるい。めっちゃずるい。あ、氏の小説でわたしが一番好きなのは、短編集で「君はポラリス」、長編なら「風が強く吹いている」です。絶対外さないと自信を持ってお勧めします、是非どうぞ。

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| 国内ま行(三浦 しをん) | 16:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
「コトラーのマーケティング・コンセプト」フィリップ・コトラー
評価:
フィリップ・コトラー,恩藏 直人
東洋経済新報社
コメント:コトラー本の中では比較的リーズナブルで分かりやすい

●本日の読書
・「コトラーのマーケティング・コンセプト」フィリップ・コトラー 著 大川修二 訳/東洋経済新報社

 僥倖にも、マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラー教授の講演会を聴講できる機会に与りまして、どうせ聴講するなら事前に予習しておこうとの気概で読みました。講演会までに通読出来なかったのですが、前半分だけでも読めてから参加出来て良かったですと云うのが個人的な感想。著者の本を読んでマーケティングについて知ろうと思うなら「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」の方を読むべきだと思いますがその本たっかいし、身近で入手出来たこちらと、あといずれ感想書く予定の「1分間コトラー」で大掴みしたわたしなりの感想をば書かせて頂きます。

  そも、マーケティングとは何ぞや。それは製品の販売とは対極にあるもので、顧客を生み出す技術である。製品があってそれを販売するためにマーケティングを行うのではなく、製品開発の「前に」マーケティングを行って顧客が求めているものを探り出し、そのニーズに適合する製品を開発するのである。企業は単に製品を売ってはならない。経験を売るのだ。

へええええ、そうなんだ。マーケティングって広告とかPRとか販売戦略の仲間の一つだと思ってました。社会人になって何年経つんだって自らにツッコミを入れたいところですが、自分が開発担当だってことに甘んじてあまりその方面の勉強をして来なかったので、今回いい機会でした。本書を読んで色々と誤解していた部分がほどかれ、マーケティングの重要性を認識するに至りましたよ。それと同時に世間での「マーケティング」と云う言葉の扱いや認識間違い、別の意味との混同があまりに多いのが不安になります。そもそも外来語なので都合良く使われて来たと云う背景もありそうですが(あくまで個人的な予想)、すっと入り込む訳語がないのも事実だしなあ。コトラー教授のコンセプトに従えばマーケティングとは「顧客価値創造」と言えるかと思います。マーケティングによって企業は自社の顧客を作り出し、また自社の製品を通じて顧客に価値や経験を提供する、それが健全なる企業活動である、と自分なりに理解しました。違ってたらどうしよ。

  本書はマーケティングに関するキーワードを A to Z で並べ、それぞれについて重視すべきことが解説されています。実在企業の成功例・失敗例をふんだんに交え、またエコノミストや経営者の言説の引用も多くあります。1セグメントが短いので取っ付き易いです。1アルファベット1ワードではなく、例えば「M」であれば「マーケティング」やら「マネジメント」やら「マーケット」やら複数ワードについての解説があります。コンセプトと云いつつ大分長い複数ワードで構成されたタイトルの章もあります。主張は一貫しているので後半では内容がかぶる部分も多くありますが、繰り返し出て来ることはそれだけ重要なんだと思いましょう。業務としてマーケティングに携わらない人も、企業に勤めているのであれば著者の本を一読しておくのは損じゃないと思います。

  肝心の生コトラー教授の講演会ですが、臨場感を大切にしようと同時通訳のイヤフォンを持っていたにも拘らず英語のまま聞いたら三割くらいしか理解出来ませんでした。勿体ないけど、生の言葉の感触を聞きたかったので、まあこれはこれで良しとします。大体本書と同じことを言われていましたよ。

 

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| 実用書 | 20:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
「弱くても勝てます 〜開成高校野球部のセオリー〜」高橋秀実

●本日の読書

・「弱くても勝てます 〜開成高校野球部のセオリー〜」高橋秀実/新潮社

 

 あー面白かった。著者独特の淡々としたおかしみ滲む言い回しに何度も吹き出しました。

 本書は、偏差値が高く東大進学率 No.1 の開成高校野球部が甲子園を目指すルポタージュです。開成高校野球部はとにかく野球が下手で普通であれば試合で勝てる筈もないものを、部を率いる青木秀憲監督の独特の打順と独特の指導により、不思議と勝てちゃったりする様を描いています。ゴロはトンネルするし、フライが上がるとぼーっと見て後になって慌てて落下地点に向かって走ったり、キャッチボールで暴投するしで、基本的にみんながみんな異様に下手。ある生徒は「エラーは開成の伝統」と言い切り、「こんなにエラーすると相手が相当油断するじゃないですか。油断を誘うみたいなところもあるんです」とまるで戦略みたいに語る。いや、捕ろうよ。

 ではそんな開成高校野球部の秘密を少しだけ開陳。打順は普通、1番強打者、2番に技巧者、3番〜5番に強打者を置くのがセオリーですが、青木監督は打順を輪だと考え、1番、2番に強打者を置き、以降そこそこ打てる順番に配置。下位打者が出塁した状態で打順が始めに戻ったら「ドサクサに紛れて」大量得点を図る、という戦略です。守備が下手なので点数を取られるのは当たり前、それを上回る得点を一気にもぎ取る作戦で勝ちに行きます。うーん東大の考えることはよく分からん(青木監督は東大野球部出身)。

 しかしその方法論が本書の魅力ではありません。本書の一番の魅力は、著者と野球部の面々の禅問答のような会話です。

――それで野球のほうは成果が上がっているんですか?

 あらためて私がたずねると、彼は真剣な面持ちでこう答えた。

「素振りはやっているんですが、球は前から来るもんですから」

――前から来る?

 当たり前すぎることで、私は一瞬何のことかわからなかった。

「球が前から来ると、素振りと違うんですよね」

 彼の抱える問題は、「球が前から来る」という野球の本質にかかわることだった。

(154ページ)

 野球部でしょ!? 野球部なんでしょ!? なんか色々おかしくない? ……いや、彼なりに野球に真剣に向き合っているからこその問題提起であり、でもやっぱなんつーかおかしい。この会話に限らず、全体的に開成高校野球部の面々は理屈で物事を図り、自分の納得のいく言葉によって言語化されないと動けない。身体を動かすより理論を優先する。それは青木監督も分かっていて、だから指導の言葉が理屈っぽい。この理屈っぽい言葉が開成の生徒には効果があり、だから「ドサクサに紛れて」勝っちゃったりもする。

 この本はもしかしたら、コーチング理論とかセオリーを破ること、着眼点などの参考にするべきものなのかも知れませんが、わたしに取っては会話のおかしさを噛み締める本でした。ちょっと分かりにくい喩えだけど、土屋賢二のエッセイ読む感じ。

 

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| 実用書 | 01:04 | comments(0) | trackbacks(0) |
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