書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「毒身温泉」星野智幸

評価:
星野 智幸
講談社
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コメント:選択的独身者コミュニティーでの生活を描く
●本日の読書
・「毒身温泉」星野智幸/講談社 ISBN:4-06-211291-4


 漫然と独身であるのではなく、選んで独身と云う形態で暮らしている人々のお話三篇。最も長い表題作よりも、冒頭の「毒身貴族」がまとまっていて一番好きでした。

 表題作を読んでいる途中は気付かなくて、読み終わって気付いた事。

 これは純愛の話だったのか。

 登場人物はそんなに多くないのですが、全員が苗字 or 名前を片仮名で表記してある為に、性別が分かりにくいです。恐らく作者は意図してそれを狙ってると思うのですが、それが為に最後まで恋愛の話だと思わないで読んでいました。だって登場人物のセリフ内の二人称でも、わざと性別を混乱させて注釈もなしだし。

 星野智幸を読んだ事のない人には、自分の中での最高傑作「砂の惑星」(「ファンタジスタ」収録。表題作よりも余程いいと思う)をお勧めするのですが、文藝賞受賞作の「最後の吐息」よりは随分分かりやすかったので、んー、上手く評価出来ないけれど、独身の人で人間関係や恋人との諍いに疲れている人などが読めば身につまされると思います。私の中で中庸な一冊でした。勿論悪くはないのですが、がつんと云う威力に欠ける感じ?
| 国内は行(星野 智幸) | 17:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
「最後の吐息」星野智幸
●本日の読書
・「最後の吐息」星野智幸/河出文庫 ISBN:4-309-40767-6


 表見返しの著者紹介を読んで知りました。星野智幸は最も笙野頼子に近いところにいるんだなあ。いや、賞歴の話ですよ。笙野頼子は唯一の三冠受賞者、即ち野間文芸新人賞、三島由紀夫賞、芥川賞を受賞しているのですが、星野智幸は「目覚めよと人魚は歌う」で三島賞、「ファンタジスタ」で野間文芸新人賞を受賞しているので、あとは芥川賞を獲れば三冠です。こないだ「植物診断室」で授賞していればなー。閑話休題。

 星野智幸は「ファンタジスタ」収録の「砂の惑星」を読んで坂道をローリングストーンで好きになった作家さんですが、文藝賞受賞作の表題作を読んで、ちょっと見方を変えました。うう、ちっとも分からない……。

 表題作「最後の吐息」は主人公が恋人に書き送った小説、即ち小説内小説がその八割を占めるのですが、それが一応の流れはあるにしろ、幻想的で喩えが難しく、「これは一体何のメタファーだ?」と終始考えながら読むことになるものだから大変です。小説の登場人物であるミツとジュビアは多くを語らずとも心で繋がっており、それがグァバの香りであったり手紙を読んだりするだけで交接している様な幻想をお互いに抱くと云う神業的な繋がり方であるものだから、読者は右往左往。そしてその小説を恋人の不乱子(なんという名前だ)に書き送る真楠の精神を疑えば、それを的確(?)に読み取って彼女なりの意図でもって文句をつける不乱子もまた凄いです。読解力が足らないとは云え、俺置いてけぼり。

 同時収録の短篇「紅茶時代」が更に凄くて、もう何と云うか幻想文学の極みと云うか、主人公の紅彦が紅茶に溶け込んだり、恋人のカイコ(なんという名前だ)に成り代わって自分である紅彦に会いに行ったりと、もう訳が分かりません。うう、何のメタファーだ。どんな「恍惚と陶酔の世界」(文庫の帯より抜粋)だ。難しいよー。

 と云うことで、自分の中の星野智幸最高傑作は依然として「砂の惑星」です。近作も読んでみたいなあ。
| 国内は行(星野 智幸) | 19:43 | comments(0) | trackbacks(0) |
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