書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎
●本日の読書
・「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎/創元推理文庫


 やられたー。ああ、やられたー。そうだよこれ新潮文庫じゃなかった創元推理文庫じゃん! ミステリーじゃん! 吉川英治新人文学賞受賞作と云う肩書きの方を重視していたのでどんなものかと読み進めていたら流れるような動きで背負い投げかまされた感じです(背負い投げされたことないけど)。吉川賞だけじゃなく、「このミステリーがすごい!」大賞2位の方を知っていたら心構えして読めてたかも知れないなあ。

「現在」と「2 年前」が交互に章立てられて、ちょっと日常離れした過去と今の出来事がゆっくりと姿を成して結末に向けて動き始める構成の巧さ。「現在」の僕は知り合ったばかりのアパート隣室の男に本屋襲撃の共犯を持ち掛けられ、「2年前」のわたしは市内で頻発するペット虐殺事件に腹を立てている。それぞれの章に共通する登場人物もおり、読者の関心は「2年前になにがあったか」に吸い寄せられていきます。巧い。うん、もうこれ以上書かないどく。あとは本編で。

 注意事項として動物虐待表現があります。個人的にはかなり辛かったです。勿論小説ですので実際に動物に危害は加えられていないのですが(作者も冒頭でわざわざ注意書きを付けています)、状況を想像しちゃうと辛いし可哀想だし怖い。なのでその点が大丈夫なミステリー好きの方にどうぞ。
| 国内あ行(伊坂 幸太郎) | 11:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
「死神の精度」伊坂幸太郎
評価:
伊坂 幸太郎
文藝春秋

●本日の読書
・「死神の精度 ACCURACY OF DEATH」伊坂幸太郎/文藝春秋 ISBN : 4-16-323980-4


 図書館マンセー。いいっすね新刊が直ぐに借りられるのは! と云う事で伊坂君です(おいおい君付けかよ親しげだな年上なのに)。この本、何がいいって装丁が非常に良い。仕事をする時いつも雨に降られる死神の話で、表紙は青地に道化師の様な人が傘を空に抛っていると云うか、空から落ちてくる傘を受け取ろうとしていると云うか、その道化師のように見える死神の指先と傘の距離感が絶妙で、いーい写真なんですよ。

 内容も良いです。良いと云うか、上手い。短篇が六つで、どれも軽くミステリ掛かっていて、真相が明かされると感心しました。相方は落ちが読めるらしいのですが、あたしは脳みその出来が余りお宜しくないので「へー、ほー、なるほど」ってな感じで毎回感心してました。

 伊坂さんの先ず上手い処は、死神の設定。人間の用いるレトリックに疎いとか、こよなく音楽を愛しているとか、死神に素手で触れられると人間は気絶するとか、そう云った特徴を随所に取り入れて話を上手く転がしています。それと、人と死の話なのに暗く気分の悪い話にならないのも凄い。いや、煌めく爽やかな話では決して無いんだけどさ。死神は仕事の一環として対象となる人間に死について尋ねたりするのですが、そこでの人間の答弁を「人間の思考に準拠していない」死神の思考でばっさりやられると、死神立場で人間の意見を客観的に読んでいたところから急に人間視点に引き戻されて、逆に人間の死に対する考え方を意識させられたりします、上手い。

 やっぱ「ラッシュライフ」買うかなー。
| 国内あ行(伊坂 幸太郎) | 20:24 | comments(0) | trackbacks(0) |
「オーデュボンの祈り」伊坂幸太郎
●本日の読書
・「オーデュボンの祈り」伊坂幸太郎/新潮文庫 ISBN:4-10-125021-9


 伊坂は良いと言われていたのと、吉川英治文学賞を取ったと云う事でオーデュボン。或る種のファンタジーでありまたミステリでもあると云う、少し珍しい感じの作品でした。舞台は現代日本。未来が見えると云う喋るカカシが殺されたが、彼はどうして自分の死を予言出来なかったのか? その謎を軸にして、妙な農村の妙な人物達がとりどりに入れ替わり立ち替わり主人公に関わってくる。島の言い伝えも絡んで、ほつりほつりと謎の答えが見えてくる、と云う作品。あれだけの長い作品をさっくり読ませる手腕は見事です。キャラクター造形が上手い。

 少し内容に触れる事は「追記」に書きました。ネタバレはしていないのですが、少しだけ先入観を持って読んでいい人、どうぞ。

 自分に取ってはのめり込んで全著作を買い集めると云う程ではないけれど、結構気に入りになりました。薄曇りの休日とかに読みたい雰囲気です。
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| 国内あ行(伊坂 幸太郎) | 20:47 | comments(0) | trackbacks(1) |
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