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書評・三八堂のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます
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2021.12.19 Sunday
「くすぶり中年の逆襲」錦鯉
●本日の読書 ・「くすぶり中年の逆襲」錦鯉/新潮社 奇しくも今日はM-1の決勝戦の日です。2021年のM-1、わたしは錦鯉を応援しています。推しが準決勝で敗退したもんでな! 因みに敗者復活戦で応援しているのはさや香とダイタクです。別に誰も聞いてねえけどな。
遅咲き漫才師、錦鯉の自叙伝ですが、漫才風の対談形式で進むしボケが織り交ぜられてて面白くて一晩で読み切ってしまいました。ボケの長谷川さんの半生が割と壮絶というかまあ色々困難に見舞われた感あるんですが、その悲壮感があまり感じられないくらいトントントーンと話が進む感じ。お笑い芸人を推し始めてから色々と苦労話を読んだり聞いたりするようになったのですが、ほんと芸人として生きるって大変だなあと思いました。錦鯉は面白くて世に出ることが出来たけれど、他にもくすぶっている芸人さんは沢山いるだろうし、芸人を貫くって大変だなあと、全芸人を推す立場で物事を見るようになり……(どんな視点や)。
あと、ツッコミでネタ担当の隆さんは比較的落ち着いているのだけど、それであのバランスの良いネタを作り、ソニーの芸人たちのブレーンとなっているのが何故かというのはあまり分からなかったです。どこからなんだろあの切れ味、不思議。
と言うことで頑張れ錦鯉! 2021.08.21 Saturday
「春になったら苺を摘みに」梨木香歩
●本日の読書 •「春になったら苺を摘みに」梨木香歩/新潮文庫 著者がイギリスで暮らしていたときの下宿の女主人、ウェスト夫人と彼女の周りに現れる多種多様な国の人々との交友エッセイ。ウェスト夫人は結婚によってイギリスで暮らすようになったアメリカ人であり、著者も日本からイギリスに渡っているということで、生まれた国を離れて異国で暮らすことで見聞きしたエピソードが綴られています。ウェスト夫人は困っている人を放っておけず、普通のルートで住むところを見つけられなかった人々を積極的に下宿させ、独特のコミュニティーを形成しています。色々な背景を持つ人々が集まれば、どうしても差別や宗教の違い、戦争体験など避けようのない話題になることがあります。著者はあるときは差別による不自由を感じ、ある時は自由で気さくな人々のコミュニティーで得難い体験をしたりするのですが、それが美しい情景描写と瑞々しいことばで静かに紡がれていきます。 ベースにはお節介で愛情深いウェスト夫人と、彼女の周りに集まる、イギリスにおけるマイノリティの人々との触れ合いが本書の醍醐味なのですが、個人的に最も印象に残ったのは「夜行列車」の章です。日本の友人たちとプリンスエドワード島へ行く列車の中で、著者は予約したボックスと異なる居住性の悪い車両に案内されます。予約券を見せて主張しても車掌に取り合ってもらえず、そこに僅かな偏見を感じ取った著者は、問題が解決した後に車掌にある言葉を伝えます。著者は車掌を完全に否定することはなく仕事人としての良い面を見て取りながら、それでも己の持つ権利を正しく受けるために「正しい言葉」で気持ちを伝える、その流れがとても良いなあと思いました。 わたしは生まれ故郷の日本以外の国で暮らしたことはないのでこの国で暮らしている限りはまあまあマジョリティとして生きていけます。でも海外、ことに欧米で暮らすと日本人はマイノリティーとなるのでそれによってどう扱われるかと言うことに驚くとは聞きますが、このエッセイを読んで自分のバックグラウンドを大切にしつつ相手の立場に想像力を働かせてしなやかに生きる姿に心が洗われました。想像力を働かせる、相手の立場を思いやる、って言うのは簡単だけど実際にそのように行動するのはとても大変なことだと思います。
JUGEMテーマ:小説全般 2021.08.12 Thursday
「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えて下さい!」西成活裕
●本日の読書 「東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えて下さい!」西成活裕 聞き手 郷和貴/かんき出版 目茶苦茶に分かりやすかった。途中で数式に脱落せず、書いてある内容をメモ用紙で計算しながら頑張って一冊読み通した。その結果、解の公式使わなくても中学の二次方程式が解けるようになった。いや、遅いとか言うなよ。 ええと、わたしは一応工学部大学院卒ではあるのですが、手に職をつけるために理系・工学部に進んだもののテストで点数が取れるのは国語と日本史という文系科目が得意な人間です。ほんで高校が県内随一の進学校であったため、息をするように理系科目を解く人に囲まれる環境におって二年の間にものすごい劣等感を醸造しそれを熟成というか腐敗させ、今でも数学と理科には異常なコンプレックスを抱いています。だって分からんもん。高校の理系科目もそうだけど、大学の数学なんて一体なにをやってたのか今でも全然分からんもん。てことでこの本のタイトルには惹かれるでしょ。で、著者が「渋滞学」で有名な西成教授でしょ。読むでしょ。渋滞学の本も大分前に読んでいるのですが、興味深い上に分かりやすかったですよ。 内容は、中学校の数学を「代数(数/式)」「解析(グラフ)」「幾何(図形)」の三分野に分けて、それぞれの分野に攻略すべきラスボスを設定し、それのみ解説するという内容です。代数のラスボスは二次方程式、解析のラスボスは二次関数、幾何のラスボスはピタゴラスの定理です。わたしが一番感動したのは、二次方程式の「平方完成」です。平方完成って中学で習った? わたし中学までは勉強出来たんだけど、平方完成習った記憶が皆目ないんですよ。大体は因数分解で解けるような問題ばっかだったから、例外のものだけ解の公式で解いてて平方完成を知らなかった。これを知っていたら解の公式がいらないし(というか自力で導き出せるようになるし)、きちんと知っておきたかったー。読んで良かったー。平方完成知らない人はググってね。 二次関数とピタゴラスの定理は大体理解しているので復習くらいで済みましたが、おまけとして最後の章で高校数学の範囲である微分・積分をやってくれてるんですね。わたしは微積の概念は理解してても数式の計算が出来ないので、ここの章も良かったです。計算方法は後でどうにでもなるし(ならん)。とにかく、数学の入り口でつまづいた人にはお勧めです。
JUGEMテーマ:ビジネス書 2015.11.18 Wednesday
「からくりからくさ」梨木果歩
・「からくりからくさ」梨木果歩/新潮文庫 「りかさん」読んでから、こっちを読んでね。「りかさん」はクラスのお友だちを羨んでリカちゃん人形を欲しがった蓉子が、おばあちゃんから貰ったのは日本人形のりかさんだった、ってところから始まる少し不思議なお話でとても心に残りますので女性にお勧め。 本書「からくりからくさ」は成人後の蓉子を取り巻くお話でありながら、りかさんを巡る思いもかけない壮大な歴史の物語となっており驚きました。竪型の機織り機で織り込まれた模様を外側から眺めつつ、一本一本の糸を触ってその染めの色合い、糸の撚りを丁寧に鑑賞する感じの物語です。 大好きだった祖母の死と共に、りかさんと心が通じなくなった蓉子。蓉子は染色家としての一歩を踏み出そうとしているところで、りかさんとの間にぽっかり空いた空白を埋めるべく、祖母が丁寧に暮らした家に三人の女性を下宿させて合計四人で共同生活を始めます。おっとりした蓉子、繊細で柔らかな紀久、はっきり物を言う与希子、真面目な努力家マーガレットとそれぞれ個性豊かな四人が楽しく共同生活を始める冒頭は心が和みます。糸染めをやる蓉子と、織物をやる紀久と与希子は互いの技能を生かして制作をしたり、マーガレットと文化の違いでしみじみと話をしたり、古い家を丁寧に使って暮らす様は気持ちがいいです。染色や織物の専門用語が頻出し、コストの高い文章だなあと思います(コストの高い文章:何気ない一言でも、きちんと調査していないと文章に出せないような、時代性、専門性の高い言葉を表現した様子。「文学賞メッタ斬り」の豊崎由美さんが使ってた)。 四人の生活を縦糸にしながら、横糸には紀久と与希子の織物の話、マーガレットの恋愛の話、そしてりかさんを巡る伝説の人形師の話が絡んで来ます。中盤から後半にかけての物語の編み方が本当に上手で、徐々に判明していく人物のつながりとアイテムの関連、それを導くように配された数々のエピソードとりかさんの神性が結末まで怒涛の展開で続きます(でもあくまでも物語は静かに進行します)。りかさんは人形でありながら物語の中心であり、りかさんに強い思い入れを持つ蓉子を中心に、次第他の三人の中でもりかさんの存在が大きくなっていきます。そしてりかさんがただの人形ではない理由も、徐々に明らかになっていきます。 心に残ったのは、紀久と、彼女が織物の歴史を辿る取材で訪れた村に住む老婆のエピソードです。老婆が彼女に掛けた言葉に、感動で鳥肌が立ちます。そして圧巻のラストシーン。美しいものは少し残酷で、儚い。 JUGEMテーマ:小説全般
2014.05.29 Thursday
「シゴトの渋滞学」西成活裕
・「シゴトの渋滞学 −ラクに効率を上げる時間術」西成活裕/新潮文庫 東大教授である著者を知ったのは「日経ものづくり」(購読申し込みで読める技術者向け雑誌。店頭販売なし)での連載からでした。理系の癖に物理と数学に劣等感を持つわたしに、高等数学がどのように日常現象の解明に役に立つかを分かりやすく説いてくれていました。まあ、書かれていることが全部分かったかと云うとそうでもないのですが、大学で教えられて「これ何の役に立つの?」と思っていた数学がこのように役に立つ、と具体的に分かったのが良かったです。連載の内容は著者の「とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学」として一冊にまとめられていますので、参考までに。 で、前置きが長すぎましたが、その連載に触れたことで著者はわたしの中で「学問と現象を分かりやすく繋ぐ人」となりましたので、本書もそう云う期待を持って読みました。著者の専門は渋滞学。車の渋滞はどうして発生するのか、渋滞の先頭はどうなっているのかと云うことは誰しも考えたことがあると思いますが、これに数学を媒介として取り組んだ研究をしておられたとのこと。本書は仕事の詰まりを渋滞に見立てて解決のコツを示唆するビジネス書ですが、一冊通して最も印象に残ったのは冒頭、著者の本業である渋滞学についての記述です。 ズバリ、渋滞を解消する方法は「車間距離を開けて運転すること」だそうです。小仏峠の渋滞に、車間距離を開けて走行する実験用の車を八台投入しただけで、平均時速を二十キロ以上引き上げたそうです。車間距離を開けることで急ブレーキがなくなり、渋滞の詰まりを緩衝すると云うことです。へー。因みに渋滞の先頭はどうなっているかと云うと、先頭に当たる車は時速十〜二十キロくらいで次々に後ろの車に移って行っているそうで、先頭の車は自分が先頭であると気付かないもんなんだそうです。へー、へー。 本書は三章立てで、「個人の渋滞、解消します!」「部内の渋滞、解消します!」「社内の渋滞、解消します!」となっています。渋滞学を時間術に応用した「仕事の渋滞」解決法は、車と同じく「予定の前後に30分程度の空白時間を入れてスケジューリングすること。そうは言ってもなかなか実現は難しいですが、心に留めておくことで少しは仕事もスムースに進んでくれる、かも知れませんね。 部内の渋滞の解決としては、関係各所との会話を増やすことで、仕事が滞留する原因となる「連絡不行届き」の詰まりを解消するべきとのことです。そして続く社内の渋滞に関しては、各人の向かう方向を一致させることで(その一致のためには会話が大事。「部内」の内容を踏まえてね)人の力を「0.9+0.9+0.9=5」にすることが出来るという展開です。第三章の社内の渋滞に関しては、著者が研究生活を送って来た中で、成果はあるのに世に認められなかったことが、研究が社会と繋がっていなかった(ニーズを無視していた)ことによる、と云う思い出と絡めて語られており、組織の中での点としての自分を「流れ」させることにより点が線になり、面になり……遂には社会全体の流れを良くする方向へと向かうよう努めるべきであると云うまとめに至ります。 ビジネス書としてより、渋滞学の方の記述が強く心に残ったのでそちら側の感想が多かったですが、著者の数学の本(持っているが未読)の方も是非読んでみたいと思います。 2013.08.31 Saturday
「アナーキー・イン・ザ・JP」中森明夫
・「アナーキー・イン・ザ・JP」中森明夫/新潮社 おもろかった。一晩で読み切ってしまった。 アイドル好きの高校生がひょんなことからパンクに転向し、セックス・ピストルズの伝説のベーシスト、シド・ヴィシャスと話をしてみたいと怪しげなイタコに「ナンバーワンアナーキスト シド・ヴィシャス」の降霊を依頼したら、日本のナンバーワンアナーキスト大杉栄が脳内に住み着いて仕舞った、とその着想に爆笑して掲載誌の新潮 2010 年 5 月号を購入したはいいがずーっと放置していたのを、書店で文庫版を発見し「うわー、もうそんなに経ったのか」と初出の新潮引っ張り出して読み始めたらこれがおもろいのなんの。著者の中森明夫はアイドル評論家で当該作が初めての小説とのことですが、大正と現在を行き来して、闘争・ライブ・修羅場・デモ、とどんどん場面が変わって飽きない。 大杉栄・杉さんはシンジの口を借りて喋るし、シンジが寝てる時は勝手に体を使って自分の死後から現代についての政治情勢を勉強して小憎たらしい歴史教師を論破するし、「初めに行為ありき」でいきなりメーデーのデモに行くし、シンジのエセパンクバンドのライブ中に無政府主義について演説始めて会場を熱く盛り上がらせるしで、矢継ぎ早に新たなイベントが描かれて展開早い。学習能力が高く博覧強記な癖に私生活は四角関係を繰り広げるなど女にだらしなく、愛人神近市子と生涯の恋人伊藤野枝との修羅場(日陰茶屋事件)にシンジをタイムスリップ体感させたりなんかしてもう盛り沢山。宮崎哲哉や石原慎太郎、小泉純一郎など実在の人物も登場します。 なんだかんだでよくある青春小説ではありますが、大杉栄や幸徳秋水など歴史の教科書で名前を見たことがあるようなないようなアナーキスト=無政府主義者たちの明治時代から大正時代にかけての活動が杉さんによって語られており、これが事なかれスルー主義な昨今の世間と違っていて熱いのなんの。自分の信奉する政治主義の実現のために、当時の若き活動家たちは本当に命懸けで闘っていたんだなあ、と。 そして何故敢えてこの時代にアナーキズムなのか、と云うのをもう一度考えてみたいと思いました。 2012.09.02 Sunday
「エンジェル・エンジェル・エンジェル」梨木果歩
・「エンジェル・エンジェル・エンジェル」梨木果歩/新潮文庫 読み終えてタイトルの本当の意味が分かります。高校生の主人公、孝子が語り手のシーンと、佐和子の昔の日記の抜粋が交互に配置されています。短くて読みやすいお話で、タイトルの「エンジェル」がキーワードになる入れ子構造の物語です。入れ子構造と云うのは、古いほうのお話(日記)が現代の孝子の語りの中の事象に影響している、という意味です。 と物語の構造について書いたのには訳がありまして、僭越ながら梨木さんだったら「りかさん」とか「家守綺譚」などのような綺麗でまとまったお話が書けるから、これももっと展開できるのではないかな、とふと思って仕舞いましたので…。 2012.07.14 Saturday
「彼女がその名を知らない鳥たち」沼田まほかる
・「彼女がその名を知らない鳥たち」沼田まほかる/幻冬舎文庫 幻冬舎文庫は新潮、角川、文春、集英社、講談社、小学館、朝日文庫などと比較して幅が 5mm 狭く、つまりは本棚に入れた時に 5mm 奥まって仕舞うのが厭で余程のことがない限り買わないのですが、余程のことがあり買った初沼田まほかるでした。ジャンル分けが出来ない不思議な小説でした。文学ミステリとでも言うか、恋愛小説と言うか。 三十三歳の北原十和子は十五歳年上の佐野陣治と同棲しているが彼を嫌悪し、八年前に分かれた黒崎と云う男への恋慕を引きずっています。生理的に受け付けない男でありながらも彼の稼いだ金で生活をし、日がな一日 DVD を見て暮らしている彼女の生活は、家を訪れた刑事から黒崎の行方不明を聞かされてゆるうりと動き出します(書籍の厚さで云うと半分のちょっと手前辺り)。過去の記憶から十和子は陣治が黒崎を殺したと考え、彼の性格、言動、持ち物などから少しずつピースを集めてその仮想を補強していくのですが……。 と云う筋なのに帯の惹句が「それでも恋と呼びたかった」。これはどう云うことなのかと思う向きには、どうぞ読んでみて下さいと言うほかないです。感想も書きにくいし、この話が好きかと聞かれても即答出来ないような読後感で、先にも書いたようにジャンル分けもしにくい得意に記憶に残る小説でした。とまれ、著者の他の作品も読んでみたいと思います。 2010.01.24 Sunday
「神様のカルテ」夏川草介
●本日の読書 2006.10.20 Friday
「家守綺譚」梨木香歩
・「家守綺譚」梨木香歩/新潮文庫 ISBN:4-10-125337-4 これはほんの、百年ほど前のお話。 単行本が発刊された時から読みたくて堪らなかったのを文庫になるまで待つ辺りが我乍ら貧乏性。単行本のストイックな装丁がとても良かったのですが、青竹を思わせる色でタイトルが書かれた文庫の装丁も、単行本に勝るとも劣らない。いい本は装丁もいいなあ。 駆け出しの文筆家である綿貫はひょんな事から、湖で事故に遭い亡くなった学生時代の友人、高堂の実家に「家守」として住む事になる。その古い家で起こる「少し不思議な」事を描いた短編集。「少し不思議な」と表現しましたが、書きようによってはそれは怪異になったりファンタジーになったりする現象を、この物語の中で綿貫は特段原因を追求せず起こるに任せて受け止めるので、厭味にならずにとても気持ちの良い読後感があります。「ああ、そういう事もあるかもね」と云う風な。事故で亡くなった高堂も、偶に床の間の掛け軸からこちらへやって来ます。 それぞれの短編は植物の名前が表題に付いています。中でも庭のサルスベリが可愛いです。いじらしいの。あと、優れた犬のゴロー。 本読みの人から「何かお勧めの本を」と言われた時には自信を持って勧められる本です。逆に癖や匂いが少ないと云えばそうかも知れませんが、明言されていないにも拘らず、綿貫と高堂の人生へのスタンスの違いや、綿貫の性格(引いてはそれが、高堂家を任された所以であるような気もする)などについては含蓄があります。こう云う押し付けがましくなく悟らせる文章は好きです。 季節は一巡り、四季をぐるりと回ってほつりほつりと起こる「少し不思議なこと」を読んで、この秋の夜長に少しいい気持ちになってみませんか。 |