書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

「夢を与える」綿矢りさ

評価:
綿矢 りさ
河出書房新社
¥ 1,365
コメント:美少女夕子のアイドルとしての怒涛の半生記。
●本日の読書
・「夢を与える」綿矢りさ/河出書房新社 ISBN : 4-309-01804-1


 あたしは面白かったけどなあ。

 と云うのはちょこちょこと書評を読むと、芥川賞受賞作「蹴りたい背中」から大分時期が開き、嫌が応にも注目、期待された長編小説だったが故に(故か)、評判が芳しくないのだこの作品。

 話は主人公の母親、幹子が恋人の冬馬から捨てられそうになる場面から始まります。彼を引き止める為に計略的に妊娠して生まれたのが夕子、この物語の主人公です。夕子はクオーターで生まれつき可愛らしく、チャイルドモデルとして活動を始めます。ある時大手食品メーカーの CM に出演する事になり、そこから彼女の怒涛の人生が音を立てて回転し始めます。

 確かに小説と云うよりはあるアイドルの伝記を読んでいる感じはしますが、彼女の人生が通常の人の二倍くらいの速度で走っているもんだから退屈はしません。そこに訳ありで結婚した両親それぞれの心情や、夕子自身の経験と成長による考えが加わってするすると物語を楽しめます。何より、「インストール」「蹴りたい背中」前二作よりも気の効いた表現が増えているので、素直に「上手になったなあ」と思ったのですが、書評家の人たちはそう思わなかったのでしょうか。

 あと必ず言われるのが、文藝賞受賞、芥川賞受賞時のアイドル扱いと過度な報道について。作品がアイドルを描いたものであるので、「当時の作者の経験を生かして〜」等と作者と夕子をダブらせて評価しているものも良く読んだのですが、ある程度はそういうこともあるかも知れませんが必ずしも総でもないんじゃあないのかと云うのがあたしの感想です。ネットでの叩きとかそういったのは実体験が元になっている可能性もありますが、全部が全部じゃないだろうし、逆にそこを狙い作者のパブリックイメージを逆手に取っているとしたら大したもんじゃあないですか、それこそ評価しましょうよ。

 純文学ではなくエンターテイメント小説だと思いますが、「蹴りたい〜」より楽しめました。
| 国内わ行(その他) | 00:19 | comments(0) | trackbacks(0) |
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