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書評・三八堂のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます
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2014.07.11 Friday
「ナニワ・モンスター」海堂尊
・「ナニワ・モンスター」海堂尊/新潮文庫 (結局のところ、海堂作品は全部読むしかないのだ)解説・津田大介 本作はインフルエンザ・パンデミックに関するメディア情報操作と霞ヶ関官僚の利権に関するお話です。新型インフルエンザ「キャメル」の日本上陸を水際で阻止すべく展開される成田での検疫強化を尻目に、渡航歴のない人間が国内でキャメルを発症……もう既に多くの人の記憶から抜けてしまっていますが、2009 年春頃に国内を騒がせた A/H1N1 新型インフルエンザの蔓延が下敷きになっています。文芸誌連載で読んでいた人はすごく「今まさに起こっていること」との感じが強かったでしょうなあ。著者は現実事件を作品に取り入れて、その根幹にある医療システムの問題点と歪んだ情報操作について問題提起を繰り返していてお見事。わたしなんか、すぐにメディアに踊らされる方だからね、思慮が足りないからね。 海堂尊は怒ってる。この国のいろいろな歪みに。 第一部は地域医療を支える町医者の視点で新型インフルエンザがメディアの情報操作のより市井の人々を巻き込んでいく様を描き、第二部は検察官の正義を描き、第三部は自治体の敏腕首長の理想と現実を描いています。どの章も興味深いのですが、第一部が特にエンタテイメントとして面白かったです。キャメルがいかに危険かと云う情報が蔓延し、町に無遠慮な取材が訪れ、地域がおかしくなっていく様が。それを阻止する医者たち、黒幕の活躍を期待してどんどん読み進めて仕舞います。登場人物の未決着の過去の話などが残っているので次回作もきっと読んじゃうんだろうなあ。明らかに橋下徹現大阪市長モデルの村雨知事の活躍も望まれますし(しかし執筆時は知事だったんですよね橋下さん)。 そして話の筋とはちょっとずれるのですが、第三部の地方自治体に於ける医療施策のモデルとして、解剖率 100% の町、舎人町という自治体が登場するのですが、この町のモデルになった自治体が実際に存在するということが驚きです。福岡県の町だそうですが、「剖検率 100% の町ー九州大学久山町研究室との 40 年」(祢津加奈子/ライフサイエンス出版)という本に興味が湧きます。 「ケルベロスの肖像」で一応の完結を見た田口・白鳥のバチスタシリーズですが、本作は旧知の登場人物にスポットを当てた同時系列の別の作品です。文庫帯には「新章開幕」の字が踊りますが、彦根を主人公にしたシリーズになるんでしょうかどうでしょうか。本作続編の「スカラムーシュ・ムーン」は新潮誌上で連載中とのことですが、バチスタほど長くならないんじゃないかな、彦根の独壇場なので(頭良すぎるやつが主人公だと話が長くならない気がする)。 2014.03.29 Saturday
「ケルベロスの肖像」海堂尊
・「ケルベロスの肖像」海堂尊/宝島社文庫 バチスタ・シリーズ完結編。と思ったら先日見た新聞広告でスピンオフの「カレイドスコープの箱庭」って出てたぞ、終わんないんじゃないのか。 それはさて置き、今作を読む前には「螺鈿迷宮」と「ブラックペアン1988」を読んでおいて下さい。今気付いたけれど二作とも宝島社文庫じゃないね。 いよいよ Ai(オートプシー・イメージング。非破壊での死亡時画像診断)の本格運用を目指し、東城大付属病院に Ai センターが建設されました。センター長は何故か不定愁訴外来の田口医師が就任する運びとなります。そんな折、東城大に脅迫状が。「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」、ケルベロスの塔とは恐らく新設の Ai センターを指す言葉と予想され、差出人に以前桜宮病院の崩壊と共に死亡した筈の碧翠院小百合/すみれ姉妹の影がちらつきます。過去の事件発生時、姉妹と因縁があった田口医師は事件を再調査し始めます。 遺体の死因究明に関しては破壊検査である解剖(司法・法医学科)と非破壊検査である Ai(医療・放射線科)の対立の構図がシリーズ初期より描かれています。Ai センターの主導権をどちらの部署が担うかと云うことで権力闘争があり、著者は Ai の普及に努めている立場があるので後者のメリットが詳細に述べられています。遺体の疑わしい箇所を切り開かなくてはならない解剖よりも、遺体のスキャニングで死因を究明出来る Ai の方が利用価値が高かろうと云うことは思います。もし外傷が目立たなかったらその箇所を解剖することはないかも知れませんしね。まあ、そう云う目立たない外傷も見逃さないのがプロなので、解剖医をけなすつもりはありませんし、Ai も放射線医師の読影が未熟であれば真相を見逃す危険性はあります。医者の技術、経験が同等に優れているとしたら、非破壊の Ai を実施した後に解剖で確認するのが、死亡原因の究明には鉄壁の備えと考えられますが、実際の医療はどうなっているのでしょうか。Ai は設備投資費がすごそうなので、普及するにはまだ時間が掛かるのが実際なのではないかと想像しています。 前作の「アリアドネの弾丸」がミステリとしても白鳥の口攻撃としても痛快で読み応えがあったのに比べると、話をまとめに入っている分、痛快と言うより寂寥と言う感じがしました。白鳥、殆ど活躍しないし(ウザキャラだけど出番が少ないと寂しい)。大オチも「そ、そう来る? この人選は考え直すべきでは?」と思いました個人的に。物語の終盤、脅迫状を出した犯人と対峙するシーンで回収されていない伏線があるので、きっと「カレイドスコープ」はこの事件の天馬大吉視点になるのかしらと想像しております。取り敢えずシリーズ完結お疲れさまでした! 本作を原作に映画も完結編が公開されるようですが、このシリーズの解説として「いわゆるバディもの」と書いてあるのを読むまでバディものだと気付きませんでした。バディものって互いに互いを意識しているライバルコンビと云う印象でいたので、白鳥と田口の一方的師弟関係もバディ扱いなのか、あ、そういや「相棒」での右京さんと甲斐君ってこの関係に近いな、だとするとバチスタも確かにバディものと考えられなくもな……(果てしなく話が逸れていく) 2014.02.28 Friday
「アリアドネの弾丸」海堂尊
・「アリアドネの弾丸(上)(下)」海堂尊/宝島社文庫 だから白鳥は阿部寛でも中村トオルでもないんだってば。中年太りの嫌味なキャラなんだよ。わたしがキャスティングするなら伊集院光かガリガリガリクソンだな。 シリーズ最終巻「ケルベロスの肖像」を購入した後に、その前に刊行された本作を読んでいないことに気付き慌てて購入した次第。刊行順に読まなきゃね。はい、久しぶりのバチスタシリーズです。調べるとこれの前の「イノセント・ゲリラの祝祭」読んだの 2010 年なのでざっと四年振り、そりゃ登場人物も忘れますわ。そう、今作にも過去の登場人物が簡単な紹介と共に再登場するのですが、四年経っていると「これ誰だっけ」が多すぎて大変でした。と云う事で脇役の素性を知っておきたい人は事前に「螺鈿迷宮」(南雲)と「イノセント・ゲリラの祝祭」(彦根・桧山)、「ナイチンゲールの沈黙」(城崎・牧村)を読んでおいて下さい。あとは「極北ラプソディ」がこの直前に起こった事件の話です。 さてアリアドネ。丁度ドラマ化もされているようですが、トリックもアリバイ崩しもきちんとしていて、ミステリとして読み応えがありました。ミステリ色の強さはバチスタ並みです。強磁場のため金属の持ち込み厳禁のMRI内部で射殺死体が発見され、側には拳銃を持つ男が気絶し倒れています。被疑者である気絶男はここ東城大病院の高階院長で、彼が犯人である筈がないと信じる田口・白鳥コンビがトリックを明かしていくと云う筋です。医療機器について詳しくなくても大丈夫、医師とは言え専門外の田口医師に、盟友島津医師が解説するという流れで読者も知識を得ることが出来ます。 さて、次の本で完結だ、楽しみ! 2010.10.31 Sunday
「ジェネラル・ルージュの伝説」海堂尊
●本日の読書 2010.10.15 Friday
「ジーン・ワルツ」海堂尊
ふと思い立って、サイドバー(←)の並び順、変えてみました。ぽつぽつとしか更新しないので、カレンダーとか要らないし。著者ごとのインデックスさえあればそれでいいし(自分がほかの書評サイトみるとき基準)。 2010.10.10 Sunday
「イノセント・ゲリラの祝祭」海堂尊
●本日の読書 2010.10.06 Wednesday
「ブラックペアン1988」海堂尊
●本日の読書 2010.08.20 Friday
「螺鈿迷宮」海堂尊
●本日の読書 2010.06.05 Saturday
「ジェネラル・ルージュの凱旋」海堂尊
●本日の読書 2010.06.04 Friday
「ナイチンゲールの沈黙」海堂尊
●本日の読書 |