書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

「ビブリア古書堂の事件手帖6」三上延
●本日の読書
・「ビブリア古書堂の事件手帖6 〜栞子さんと巡るさだめ〜」三上延/メディアワークス文庫


 今回は一冊丸ごと太宰です。一巻で大学卒業後定職に就いていなかった五浦君がビブリア古書堂で働き始めるきっかけとなったのは夏目漱石全集の「それから」がきっかけですが、その事件をビブリア古書堂の美しき女店主・栞子さんが解いた際に五浦君の出生にまつわるある疑惑がほのめかされます。今巻はその謎と、一巻で起こった事件の続編が描かれるので一巻は必須で読んでおいて下さい。まあ六巻まで来たら既刊読まずに手に取る人はいないと思うんですが。

 前巻で栞子さんと五浦君のなかなか進まない関係に一応の進展が見られた訳ですが、太宰の本にまつわる大きな発見と稀構本を巡る攻防の合間にゆっくり進展するラブストーリーが差し挟まれて、いやあほっこりしますね、幸せになって欲しいですね。……いつになく善人面したコメントですが、この小説のキャラたちには幸せになって頂きたいので何となく。五浦君が若い割にがっついてない性格なので好感度高いんですね。
 
 太宰の稀構本については、作品中に登場するものが実在するのかどうか分からないのですが、それが本当にあるのなら持ち主に危害を与えてでも入手したいと云う熱烈なファンが五人はいそうなくらい、貴重で魅力的で少し恐ろしい存在の本が登場します。その貴重な本をめぐるミステリの序章として、誰もが教科書で読んだ「走れメロス」の底本にまつわる意外な話や、古書の価格を左右する「アンカット」などの雑学も得られます。表紙の絵でライトノベルと思う勿れ、満足度偏差値高くて楽しめますですよ。今回の犯人も分からなかったです(真面目に当てようとしてないけど)。

 物語は終局を見据えて、あともう一、二冊とのこと。少し寂しいですね。
 
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| 国内ま行(三上 延) | 20:15 | comments(0) | trackbacks(0) |
「ビブリア古書堂の事件手帖5」三上延
評価:
三上 延
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
コメント:今回も安定のクオリティ

●本日の読書
・「ビブリア古書堂の事件手帖5〜栞子さんと繋がりの時〜
」三上延/メディアワークス文庫

 いつの間にか五巻を数えるまでになったビブリア堂。栞子さんと五浦君の恋愛関係にも微妙ながら動きが見えてきたところに、長く失踪していた栞子さんの母親(ラスボスポジション)の姿も見え隠れしてきた……と云うところが四巻までのざっくりした粗筋です。ざっくりしすぎ。さて四巻は一冊で一つの謎を解くシリーズ初の長編形式だったのに対し、五巻は通常通りの中編集です。謎の鍵となる今回の古書は、古書情報誌「彷書月刊」のバックナンバーと手塚治虫の「ブラック・ジャック」、寺山修司のデビュー作「われに五月を」の三本です。

 謎解きの品質は安定しており、キーとなる古書雑学もミステリとしての伏線も上手いこと張られていて平均点高いです。1巻から読んでいる人は続けて読みましょう。

 今巻でたまたま印象に残ったことが二つあるので書きます。一つ目はイラストです。シリーズの売り上げに間違いなく貢献している越島はぐ氏のイラストですが、この方は可愛らしい人物絵のみでなく、風景画もとても上手ですね。既刊でも扉絵は見ていたのですが、五巻のモノレール停車駅の絵がとてもきちんとしていて、人物画は得意でも背景を描かせると「?」な絵描きさんも多い中で、感銘を受けました。

 二つ目は寺山修司です。高校生の頃に「家出のすすめ」を読みましたが、重度のマザーコンプレックスが反映された気持ちの悪い随筆と云う印象しか残りませんでした。それがビブリア堂で「われに五月を」の抜粋された部分を読むと、とても瑞々しい表現に全ての言葉がきらめいていて鮮烈な作品だったのです。驚きました。二十年目の再会です。もう一度、寺山修司に出会い直してみたいと思いました。
| 国内ま行(三上 延) | 10:53 | comments(1) | trackbacks(0) |
「ビブリア古書堂の事件手帖4」三上延
●本日の読書
・「ビブリア古書堂の事件手帖4」三上延/メディアワークス文庫


 うーわーすっげー久し振りに本読んだー。丁度原作が月九でドラマ化されて毎週「違う、栞子さんは違うっ!」とテレビの前で叫び続けていたわたくしが、最新四巻の読書感想文を書きますよ。因みに原作の栞子さんとドラマの栞子さんの違いは以下です。

(原作)黒髪ロングヘアー(ドラマ)ショートヘア
(原作)黒縁眼鏡(ドラマ)裸眼
(原作)超絶人見知りだが、本のことになると饒舌(ドラマ)いついかなる時でも常に堂々としている
(原作)グラマー(ドラマ)そうでもない
(原作)主人公24歳より明らかに年上(ドラマ)二十代前半

挙げると切りがないのでこのくらいにします。そしてわたし的にまずかったのが、ドラマの最終回とその一回前の前後編が、未読の最新四巻ノネタを元にしていたと云う点です。本読まなきゃドラマ見れねえじゃねえか! ドラマ見なきゃHDレコーダーから消せねえじゃねえか! 情報リークしてくれた母に感謝です。原作より先にドラマ見てたら原作のネタバレで面白さ七割減でした。あー先に本読めて良かった。

 さて第四巻ですが、今までの三冊が短編集だったのに対して、一冊丸ごとで一つのお話、江戸川乱歩に題を取った長編です。で、謎の入り組み方も謎解きも作中随一の面白さです。あ、でも飛ばし読みはお勧めしません、順を追って読み進めて下さいな。江戸川乱歩と云うケレン味に満ち溢れた作家の特性と、古い作家であるが故に色々な出版社が版を重ね何度も改稿されたことが謎を重厚に奥深くしています。栞子さんと五浦君の関係もちょっとだけ進んだ、かもね。
| 国内ま行(三上 延) | 17:40 | comments(1) | trackbacks(1) |
「ビブリア古書堂の事件手帖 (3)」三上延

●先週くらいの読書
・「ビブリア古書堂の事件手帖(3) ~栞子さんと消えない絆~」三上延/メディアワークス文庫


 三巻も早速買って参りました。このシリーズはどれもいきなり文庫出版で、文庫派のわたくしには非常にありがたい限り。そして内容も安定です。今回も古本市場の豆知識や希少本の蘊蓄に絡めながら栞子さんと五浦君の進んでいないようで進んでいる関係が紡がれています。

 サブタイトルは「栞子さんと消えない絆」。1巻、2巻をお読みの方はご存じでしょうが、この物語には栞子さんのお母さんが〈実在としては)登場しません。彼女が幼い頃に出奔しており、栞子さんは自身の母について曰く言い難い感情を抱えています。が、成長し古本屋を切り盛りする(知識的に)彼女は、古い知り合いから見るとどんどん彼女の母に似てきています。

「自分は母とは違う」

そう信じる彼女に、この巻では母の古い知り合いや同業者からの依頼、親子関係に因んだ案件が持ち込まれます。全2巻同様、先に出版されているものを読まれてから手にされることをお勧めします。シリーズのクオリティは安定しており「本でも読んでみよっかなー」と云う人に気軽にお勧め出来るシリーズかと。

| 国内ま行(三上 延) | 00:48 | comments(1) | trackbacks(1) |
「ビブリア古書堂の事件手帖 (2)」三上延
評価:
三上 延
アスキー・メディアワークス
コメント:だんだんおもろくなってきた

●本日の読書
・「ビブリア古書堂の事件手帖 (2)」三上延/メディアワークス文庫


 一巻を読んで面白かったので続けて二巻を購入し、読書。著者があとがきで書いているように、今巻から本編と云う感じです。キャラクター説明は一巻で行い、ようやく退院して店に戻ってきた栞子さんと五浦君の甘酸っぱい関係を絡めながら古本にまつわるミステリーが語られるのです。前巻のキャラクターが文章の端々に登場しますので、いきなり二巻から読み始めるのはお勧めしません。

 今巻はあの有名作家にまつわるミステリーや、漫画古書にも物語が広がり、それに伴って、伏せられていた栞子さんの生い立ちが空かされていきます。続きがますます楽しみですな!

 このシリーズ、表紙のイラストでキャラクター小説やライトノベルと云う見方をされがちかとは思いますが、古書の蘊蓄が非常に面白いです。わたしもそう云ったことに詳しい方ではないのですが、ここで取り上げられている希少本や版による違いや作家の別名など、一つとして知っていたことはありませんでした。全部初耳。それを「へー」「ふーん」と読んでいるだけでも面白い。著者の文体も癖がなくするする読める素直なものなので、読んでいて引っ掛かるところもなく、通して三時間くらいで一冊読めます(わたしはそんなに早く読む方ではないです)。

| 国内ま行(三上 延) | 16:15 | comments(2) | trackbacks(1) |
「ビブリア古書堂の事件手帖 (1)」三上延
評価:
三上 延
アスキーメディアワークス
コメント:てゆーか表紙のおねえちゃん胸でかすぎやろ

●本日の読書
・「ビブリア古書堂の事件手帖 (1)」三上延/メディアワークス文庫


 どうせライトノベルだろうと軽い気持ちで読んだらなかなか良かったです。古書にまつわる謎を古本屋の美人店長が解く安楽椅子探偵もの。この店長が、文庫の表紙イラストにあるように黒髪ロングの美人で、本のことになると饒舌だがそれ以外では極端な人見知り体質で黒縁眼鏡の年上という、所謂萌え要素満載の設定。一冊に四つの短編が収録されています。

 語り手は就職先未定の大学卒業直後の男性、五浦。彼が祖母の蔵書整理でかのビブリア古書堂を訪れることから物語が始まります(厳密に云えばプロローグはもう少し先の時代ですが、それは実際の小説をお読み下さい)。五浦君は幼少期の出来事で極端な文字恐怖症ですが、ビブリア古書堂の栞子さんとの出会いで、多少不純ながらも本や物語について近付けるようになっていきます。そのきっかけとなるのが古書堂に持ち込まれる曰く付きの古書の数々。マニアックですよね、古書のあれこれ。初版本・稀少本・乱丁本の価値やら背取りと云う職業(職業?)など、知っている人は知っている本の隙間ごとがぽこっと出て来るのも本好きには嬉しいです。

 本書をジャンルで分類するとミステリになるのですが、それは怪我で入院中の栞子さんが五浦君の話を聞くだけで古書に隠された謎をするするとほどいて仕舞うからです(だから安楽椅子探偵もの)。伏線の張り方もわざとらしくなく、かといって見え透いてもいない丁度良い塩梅です。章をまたいで発動する伏線もあり、通して読んだ最終話「太宰治「晩年」(砂子屋書房)」が一番良く出来ていました。続刊出ているようなので、読んでみようかと思います。

 そして五浦君と栞子さんの恋の行方には特段関心を払っていないと云う。いや、上手く行けばいいなー、くらいは思いますが。
| 国内ま行(三上 延) | 16:20 | comments(2) | trackbacks(0) |
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