書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「書く習慣」いしかわゆき

●本日の読書

・「書く習慣 〜自分と人生が変わるいちばん大切な文章力〜」いしかわゆき/クロスメディア・パブリッシング

 記録を残すというのは結構重要なことだとわたしは思っていて、何故なら読んだ本の感想とか舞台を見た感想だとか生活での出来事などは、それぞれ読書記録、自分のツイート、日記などに記録があることによって思い出せることの解像度がめちゃくちゃ上がることを体感として知っているからです。わたしが一番読書量が多かったのは大学生の時ですが、読んだ本の感想を新潮社の「マイブック」という文庫サイズのノートに書き留めていて、それは後で読み返すと結構楽しかったり忘れていることの多さに驚いたりする、自分にしか価値が分からないけれど貴重なものです。

 書くことは好きだし、記録が大事なのはこんな感じで十分承知しているのだけど、いかんせん書く日記止めてるし、習慣化してないよなあと思いこの本を手に取りました。大きくは、「書きたい、でもどうやれば?」という人の背中を押す本です。ライティングの技術についての章もあるけれど、まず悩む前に書き始めること、特別なことじゃなくてもいいこと、個人の感想は他人にとっては特別な情報になり得るから、上手な文章でなくてもいいこと、定型で終わらせる必要はないこと、など、書くことをとっつきやすくするための言葉が溢れています。自分が習慣化して書くことが、読み手の習慣になればいい、というのも面白いと思いました。ライターさんとかだと、人の生活習慣に自分の書いたものを良んでもらう機会が組み込まれることはダイレクトに仕事に影響しそうなので、それは確かにいいと思う、うん。

 わたしは「書く」ことへの抵抗はないながらも、日常ツイートとかは所謂タイムライン汚しになるから不要だと思い封じ込んで来たので、それはもう少し解放してもいいのかな、という気持ちになりました。ただ書く内容についてはもちろん配慮が必要で「その人を目の前にして同じことが言えるか」「人の人格を否定していないか」には気をつける、と。うー、家族への不満とかだとそこは疎かにしそうだ………。

 巻末に「書く習慣一ヶ月チャレンジ」として書きやすいテーマを30個集めた見開きがあって、これは有効だと思います。何か書きたい人はこのテーマに沿って書いてみるといいと思います。全体的に読みやすく、「書きたい」人の背中を押してくれる本でした。

 

JUGEMテーマ:新書

| 実用書 | 12:33 | comments(0) | - |
「何とかならない時代の幸福論」ブレイディみかこ・鴻上尚史

●本日の読書

・「何とかならない時代の幸福論」ブレイディみかこ・鴻上尚史/朝日新聞出版

鴻上尚史の人生相談が結構好きです。書いてあることが真っ当であると思うからです。相談者に「頑張れ」などの無責任で無茶なことは言わないし、相談者の立場に寄り添ったアドバイスが書いてあるからです。この「相手の立場に立つ」というのは「エンパシー」と表現するのだとこの本を読んで知りました。日本語だと似て微妙に非なる「シンパシー」の方しか知らん人も多そうです(わたしがそう)。

わたしは四十歳過ぎても社会情勢や経済政策について知識がなく、その自覚はあるのに情報を取ろうとしないので、本書のような、自分が「この人の考え方好きだな」と思う人が眺めた日本やイギリスの政治経済についての情報の本はとてもためになります。読んだら頭が良くなったような気がする(という表現が頭悪い)。まあ所謂「政治経済解説本」ではなく、日本とイギリスそれぞれの現況の分析とそれぞれの問題点、社会構造と政治の違いなどを対談しながら明らかにしていきます。日本は二十年間、物価も大して上がっていない代わりに賃金も上がっていない。変わることを恐れる国民性か、為政者の戦略かは意見が分かれるところだと思いますが、ちゃんとそういうところを分かって生きていくことと、そうじゃない場合って色々差が出てくると思うのですよね、この日本は。受益者に知識がないともらい損ねるお金がある国ですからね、この日本は。

対談のブレイディみかこは「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」のヒットにより名を知られたライターさんで、イギリス在住。「ぼくはイエロー〜」は興味ありつつ未読なのでいつか読みます。ブレイディさんの立場だと、日本で自分が受けた教育とイギリスで自らの子どもが受けている教育の違いを比較出来るため、国家がどのような人を育てようとしているのかというのが分かるのですな。確かにそういう観点で教育カリキュラムを比較するというのは興味深いテーマであり、この本を読んで良かったと思う点です。かといって別の国がいいという話にせず、日本で暮らしている人は日本を良くするために何が出来るか考えていくということもまた大切。すんげえすり減るけどな。特にジェンダーバイアス系の話な!(色々あったらしい)

変えることを厭う日本においては、それこそ明らかにおかしい校則一つ変えることすら難しいのですが、この「何とかならない時代」に於いて出来ることをするのはとても大切だと思いました。

 

JUGEMテーマ:ビジネス書

| 実用書 | 20:24 | comments(0) | - |
「マイバッグ」ドミニック・ローホー
評価:
ドミニック・ローホー
講談社
コメント:納得。でもバッグにはきっとまだ迷い続ける。

●本日の読書

・「マイバッグ 〜3つのバッグで軽く美しく生きる〜」ドミニック・ローホー 赤松梨恵訳/講談社

 

 鞄探しは永遠のテーマです。わたし、服は割とどうでもいいのですが鞄が好きで、どれだけ持っていても満ち足りず、常に新しい素敵な鞄を求めてデパートやネットショッピングを見回る日々です。一番よく使っているのは吉田カバンのタンカーのショルダーバッグなんですけど、レザーで上品な女性向けのショルダーも欲しいと思ってみたり、出張用には頂き物のヴィトンあるのに A4 の入るレザートートがあったら買おうかどうしようかすぐに迷い出すとか、そんな感じです。病的。でも身の回りにあるモノは増やしたくないから一つ入れたら一つ出す気概で毎日を過ごしているとはいえ、やっぱし可愛い鞄があったら欲しくなる。

 てなところで読みました本書。曰く、常に最高のバッグを求めて失敗を繰り返したり他人の芝が青く見えるのはわたしだけではないことが分かりました。みんなバッグ選び迷うんですよね。

 そんで著者が本書の中で引いている「これだけあれば人生足りる5つのバッグ」とは以下です。

 

【イネス・ド・ラ・フレサンジュ版】

・大きめトートバッグ

・ふた付きの斜めがけバッグ

・ポシェット

・フォーマルバッグ

・籐のバッグ

【みなみ佳菜版】

・革のトートバッグ

・A4 の収まるバッグ

・上品なミッディバッグ

・ポシェットもしくはクラッチバッグ

・コットンのトートバッグ

【ドミニック・ローホー版…3つ】

・大きめトートバッグ

・メインとなるミッディバッグ

・ポシェット

 

 3つまで絞るためには、選ばれたバッグが完璧である必要がありますが、完璧に近付けるための条件としては、素材や縫製の質が高いこと、無駄な装飾やデザインがないこと、とのことです。うん、割と納得出来る説です。

 ということでまたバッグ探しの旅に出るわたしなのですが、素敵なピッグレザーのポシェットを手に入れたので満足しています現時点では

 

JUGEMテーマ:ビジネス書

| 実用書 | 20:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
「モノが減ると心は潤う 簡単「断捨離」生活」やましたひでこ
評価:
やました ひでこ
大和書房
コメント:著者の持ち歩くものを一覧にした写真は好きです

●少し前の読書

・「モノが減ると心は潤う 簡単「断捨離」生活」やましたひでこ/大和書房

 

 もう片付け本とか断捨離本とかいっぱい読み過ぎて既に「片付け本のプロ」っぽくなっているわたしです。勿論片付けは全然していません。読むだけです。プロでも何でもない。寧ろ自分が駄目人間であることを読書を通して確認してる感じですな。

 最近は片付けの方法を指導する本ではなく、片付けが進んだ家の写真がたくさん載っていたり、片付いた家の一角を撮ったインスタ映えする写真がさらさらと散りばめられた本を読むのが好きです。インテリア雑誌読むのと何ら変わらん読み方ですな。と云うことでこの本もそんな感じで2ページに1枚程度の写真が差し込んであったので読みやすかったです。

 断捨離を広げたやましたひでこさんが一人暮らしをしている家で実際に使っているものものが紹介されており、生活を散らかさないためのポイントが「食」「衣」「寝」「住」「洗」「学」「通」の各章に分けて書かれています。全ての片付け本、断捨離本に共通していますが、基本的には「好きでないもの、使っていないものは手放す」「気に入っているものだけ残した家で暮らす」ことがポイント。

 一つだけ気になったのが、自分が使わなくなったものを著者は人に譲るんですね。まあ需要と供給のバランスがいい内はよいのですが、たまに「使わなくなったら人に貰ってもらえばいい」と云った考えで動いている風に読めるところがあり、そこだけが少し疑問でした。手放すなら手に入れない方がいいんじゃないかなー、と思ったり。

 

JUGEMテーマ:ビジネス書

| 実用書 | 11:01 | comments(0) | trackbacks(0) |
「2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム」勝間和代
評価:
勝間 和代
文藝春秋
コメント:自分の片付けモチベーションを上げたい。

●本日の読書
・「2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム」勝間和代/文藝春秋社

  経済評論家の勝間和代氏が、あるきっかけから汚部屋だった自宅を徹底的に断捨離してホテルのように美しくし、自宅が世界一快適な場所となり仕事の効率が上がり新しい恋人と出会えたことを綴った「片付け本」です。わたし自分が片付け下手なのでありとあらゆる片付け本を読み漁って知識だけはあるのですが、結局やらずにそこそこ散らかった部屋で満足して暮らしております。でも片付けてきれいなおうちに住みたい欲は消えていないので、こうして定期的に片付け本を読みたくなるのです。最近は片付けメソッドを読み尽くしたので、片付け実録(写真付きが望ましい)を読む方が好きです。

 本のタイトルは「勝間式」と謳っていますが、別に氏が新しく考案した片付けの方法が書かれている訳ではなく体験談が書かれている本ですので、そこのところは注意が必要です。タイトルでもう一つ言うなら「2週間」というのも「普通の家庭なら大体2週間で終わるだろうけれど、私の家は物が多かったので約一か月掛かった」とのことで、つまりは目安としての2週間です。1日目はここを片付けて、2日目はここを片付ける……などのスケジュール表は付いていませんので悪しからず。

 氏が片付けるきっかけになったのは「座らない!:成果を出し続ける人の健康管理」という本と Apple watch だったそうです。一時間に一度立って一分間動くのは体に良いという内容を読んで、活動量計が付いている Apple watch を使い始めたことが始まり。Apple watch は座り作業をしていたら一時間に一度「Stand」とアラートが表示され、自分がいかに動いていないかが見える化されることで運動についての意識が高まったそうです。

 そしてもう一つのきっかけは「よく眠るための科学が教える10の秘密」という本。良い睡眠を取るには自分の寝室を眠るための場所にするべきだ、という表記から、寝室を快適にするための片付けを始め、そこで寝室の収納が「破産ポイント」に達していると気付くのです。モノが出しっ放しになっている寝室、モノを収めようにもクローゼットは使われていないもので埋まっている、これは捨てなくてはいけない、と2時間で断捨離決行。そこから雪崩のように家の中の片付けが始まります。

 氏が家じゅうを片付けている最中に気付いたことがロジカルな言葉で書かれていますが、冒頭にも書いたようにわたしは今、人の片付け体験を読んで自分のモチベーションを上げたいという目的があったので、メソッドの習得よりもドキュメンタリーとして面白く読めました。

 

JUGEMテーマ:ビジネス書

| 実用書 | 23:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
「できる人の仕事のしかた」リチャード・テンプラー
評価:
リチャード・テンプラー
ディスカヴァー・トゥエンティワン
コメント:合わんかった。

●本日の読書

・「できる人の仕事のしかた」リチャード・テンプラー 桜田直美 訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン

 ああー、選書を誤った。今のわたしに必要なことは書いていなかった。大掴みに言えば、会社で出世するためには見た目と動作を偉く見えるように飾り、社内の不文律には黙って従い、悪口と不正に与せず働けばいいよ、って話でした。まあ、そりゃ出世するでしょうね。

ただし、部長を狙うなら、部長の仕事ができることが大前提だ。ハイハイもできないうちから飛ぼうとしてはいけない。(168 ページ)

 だーかーらー! その「仕事ができるようになる」方法を知りたいのわたしは! 仕事ができることが大前提(ドヤ顔)じゃねーよ。どうすりゃ仕事上手く回せるようになるんか知りたいんだってば!

 てことでニーズとシーズが合いませんでした残念。

 

JUGEMテーマ:ビジネス書

| 実用書 | 19:29 | comments(0) | trackbacks(0) |
「佐藤オオキのボツ本」佐藤オオキ
評価:
佐藤オオキ
日経BP社
コメント:同い年なんだよなあこの人。


●本日の読書

・「佐藤オオキのボツ本」佐藤オオキ/日経 BP 社

 ずっと「佐藤ナオキ」だと思ってた。「オオキ」だったとは。カタカナから受ける印象で思い込みが修正されないままずっと NIKKEI DESIGN の記事を読んでいたよ。

 本書はデザインオフィス nendo 代表として有名な佐藤オオキ氏の著書。デザイン業界に然程詳しい訳ではありませんが、ひととき佐藤可士和氏(カシワシ。音読したい日本語)が若手の先鋭だった印象がありますが、最近はこの方が有名になってきたように思います。と云うのはわたしが NIKKEI DESIGN の作り出すイメージに踊らされているだけかも知れませんが。代表的な仕事を挙げると、ロッテのガム「ACUO」のパッケージデザインした方です。

 本書の内容は、過去に著者が有名企業とタッグを組んで世に送り出した作品「に至るまでのボツ案」を収録し披瀝したものです。顧客たる企業に提示するモックアップの精度と完成度が高いです。そのまま商品に出来そうなレベルのものもあるように見受けられます。個人的な事情を申しますと、わたしは NIKKEI DESIGN を読んでおりましたんで同誌の情報から著者の代表的なデザインワークを一通り知っている上で読んでおります。故に初めて手に取る人よりは「あー、知ってる」感が強い。ロッテ ACUO も、早稲田大学ラグビー部の復興も、IHI のロゴだけポスターも、ACE の全方位から開くキャリーバッグプロテカも、omni7 も、by N も、関わってヒットしたこと知ってます。うん、一流だよなあ。わたしと同い年なのに。

 にしても最近は企業イメージも含めて「デザイン」の重要性が喧伝されておりますが、著者も含め、デザイン業界で力があるとされる方は大体が企業にがっつり組み込み、企業理念に基づいてゆがみを直したり起業本来のところに立ち返ったモノ作りの支援をしているように思います。顧客である企業を巧く動かし新しい価値観を産み、ある種の企業再生を果たさせるためには、トップの英断や顧客企業内のチームの結束力、やりきる力を引き出すことが必要です。nendo がそれをどうやっているかというと、精度高いデザインとそのモックアップ、あと己らが部外者であるとの割り切りから発想されるアイデアの数で勝負してるとのこと。勿論様々な事情でそれらはボツになっていくのですが、その一度滅びたボツ案が、アイデア検討の途中で復活したり、形を変えて生かされたりするのです。うーん、エキサイティングな感じ。

 企業再生の特効薬みたいな扱いの「デザイン」とは果たしてなんなのだろうとここ一年ほど考えておるのですが、単純にこのような有名企業の成功例を読んでいると「いいなあ」と思います。しかし個人的な身に立ち返るとやっぱり自分の扱う製品には色々と制約があって、果たしてこういった革新的な「デザイン」という嵐に巻き込まれた時に何が出来るのだろう、何が生み出せるのだろう、と考えて仕舞うんですね。うーん、悩ましい(超個人的な締め)。

| 実用書 | 01:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
「コトラーのマーケティング・コンセプト」フィリップ・コトラー
評価:
フィリップ・コトラー,恩藏 直人
東洋経済新報社
コメント:コトラー本の中では比較的リーズナブルで分かりやすい

●本日の読書
・「コトラーのマーケティング・コンセプト」フィリップ・コトラー 著 大川修二 訳/東洋経済新報社

 僥倖にも、マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラー教授の講演会を聴講できる機会に与りまして、どうせ聴講するなら事前に予習しておこうとの気概で読みました。講演会までに通読出来なかったのですが、前半分だけでも読めてから参加出来て良かったですと云うのが個人的な感想。著者の本を読んでマーケティングについて知ろうと思うなら「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」の方を読むべきだと思いますがその本たっかいし、身近で入手出来たこちらと、あといずれ感想書く予定の「1分間コトラー」で大掴みしたわたしなりの感想をば書かせて頂きます。

  そも、マーケティングとは何ぞや。それは製品の販売とは対極にあるもので、顧客を生み出す技術である。製品があってそれを販売するためにマーケティングを行うのではなく、製品開発の「前に」マーケティングを行って顧客が求めているものを探り出し、そのニーズに適合する製品を開発するのである。企業は単に製品を売ってはならない。経験を売るのだ。

へええええ、そうなんだ。マーケティングって広告とかPRとか販売戦略の仲間の一つだと思ってました。社会人になって何年経つんだって自らにツッコミを入れたいところですが、自分が開発担当だってことに甘んじてあまりその方面の勉強をして来なかったので、今回いい機会でした。本書を読んで色々と誤解していた部分がほどかれ、マーケティングの重要性を認識するに至りましたよ。それと同時に世間での「マーケティング」と云う言葉の扱いや認識間違い、別の意味との混同があまりに多いのが不安になります。そもそも外来語なので都合良く使われて来たと云う背景もありそうですが(あくまで個人的な予想)、すっと入り込む訳語がないのも事実だしなあ。コトラー教授のコンセプトに従えばマーケティングとは「顧客価値創造」と言えるかと思います。マーケティングによって企業は自社の顧客を作り出し、また自社の製品を通じて顧客に価値や経験を提供する、それが健全なる企業活動である、と自分なりに理解しました。違ってたらどうしよ。

  本書はマーケティングに関するキーワードを A to Z で並べ、それぞれについて重視すべきことが解説されています。実在企業の成功例・失敗例をふんだんに交え、またエコノミストや経営者の言説の引用も多くあります。1セグメントが短いので取っ付き易いです。1アルファベット1ワードではなく、例えば「M」であれば「マーケティング」やら「マネジメント」やら「マーケット」やら複数ワードについての解説があります。コンセプトと云いつつ大分長い複数ワードで構成されたタイトルの章もあります。主張は一貫しているので後半では内容がかぶる部分も多くありますが、繰り返し出て来ることはそれだけ重要なんだと思いましょう。業務としてマーケティングに携わらない人も、企業に勤めているのであれば著者の本を一読しておくのは損じゃないと思います。

  肝心の生コトラー教授の講演会ですが、臨場感を大切にしようと同時通訳のイヤフォンを持っていたにも拘らず英語のまま聞いたら三割くらいしか理解出来ませんでした。勿体ないけど、生の言葉の感触を聞きたかったので、まあこれはこれで良しとします。大体本書と同じことを言われていましたよ。

 

JUGEMテーマ:小説全般

| 実用書 | 20:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
「弱くても勝てます 〜開成高校野球部のセオリー〜」高橋秀実

●本日の読書

・「弱くても勝てます 〜開成高校野球部のセオリー〜」高橋秀実/新潮社

 

 あー面白かった。著者独特の淡々としたおかしみ滲む言い回しに何度も吹き出しました。

 本書は、偏差値が高く東大進学率 No.1 の開成高校野球部が甲子園を目指すルポタージュです。開成高校野球部はとにかく野球が下手で普通であれば試合で勝てる筈もないものを、部を率いる青木秀憲監督の独特の打順と独特の指導により、不思議と勝てちゃったりする様を描いています。ゴロはトンネルするし、フライが上がるとぼーっと見て後になって慌てて落下地点に向かって走ったり、キャッチボールで暴投するしで、基本的にみんながみんな異様に下手。ある生徒は「エラーは開成の伝統」と言い切り、「こんなにエラーすると相手が相当油断するじゃないですか。油断を誘うみたいなところもあるんです」とまるで戦略みたいに語る。いや、捕ろうよ。

 ではそんな開成高校野球部の秘密を少しだけ開陳。打順は普通、1番強打者、2番に技巧者、3番〜5番に強打者を置くのがセオリーですが、青木監督は打順を輪だと考え、1番、2番に強打者を置き、以降そこそこ打てる順番に配置。下位打者が出塁した状態で打順が始めに戻ったら「ドサクサに紛れて」大量得点を図る、という戦略です。守備が下手なので点数を取られるのは当たり前、それを上回る得点を一気にもぎ取る作戦で勝ちに行きます。うーん東大の考えることはよく分からん(青木監督は東大野球部出身)。

 しかしその方法論が本書の魅力ではありません。本書の一番の魅力は、著者と野球部の面々の禅問答のような会話です。

――それで野球のほうは成果が上がっているんですか?

 あらためて私がたずねると、彼は真剣な面持ちでこう答えた。

「素振りはやっているんですが、球は前から来るもんですから」

――前から来る?

 当たり前すぎることで、私は一瞬何のことかわからなかった。

「球が前から来ると、素振りと違うんですよね」

 彼の抱える問題は、「球が前から来る」という野球の本質にかかわることだった。

(154ページ)

 野球部でしょ!? 野球部なんでしょ!? なんか色々おかしくない? ……いや、彼なりに野球に真剣に向き合っているからこその問題提起であり、でもやっぱなんつーかおかしい。この会話に限らず、全体的に開成高校野球部の面々は理屈で物事を図り、自分の納得のいく言葉によって言語化されないと動けない。身体を動かすより理論を優先する。それは青木監督も分かっていて、だから指導の言葉が理屈っぽい。この理屈っぽい言葉が開成の生徒には効果があり、だから「ドサクサに紛れて」勝っちゃったりもする。

 この本はもしかしたら、コーチング理論とかセオリーを破ること、着眼点などの参考にするべきものなのかも知れませんが、わたしに取っては会話のおかしさを噛み締める本でした。ちょっと分かりにくい喩えだけど、土屋賢二のエッセイ読む感じ。

 

JUGEMテーマ:小説全般

| 実用書 | 01:04 | comments(0) | trackbacks(0) |
「瞬間の記憶力 競技かるたクイーンのメンタル術」楠木早紀
評価:
楠木 早紀
PHP研究所
コメント:競技かるたに興味のある人にお勧め。

●本日の読書

・「瞬間の記憶力 〜競技かるたクイーンのメンタル術〜」楠木早紀/PHP新書

 

 まああれだ、わたしはミーハーなので自分が嵌まると分かり易く関連書籍を買ったりそれのことばっかりやったりするのですが、そう今の嵌まりは百人一首、競技かるた。

 先日、こんなイベントに行って来たんです。

「『ちはやふる』と競技かるたの世界」

そこで、楠木早紀永世クイーンの公演を拝聴し、会場で販売されていた本書を購入したと云う流れでございます。楠木永世クイーンは、中学三年生の時に史上最年少でクイーンとなり、そこから連続 10 回防衛、全ストレート勝ち即ち 20 連勝でクイーン戦引退というものすごい経歴の持ち主で(どれだけ凄いかは色々調べると分かる)、現在 28 歳と云う若き天才です。うん、天才。そして可愛いし、講演の説明もとても分かりやすかった。小学校の先生をやってらっしゃるとのことですが、話し慣れている感じでした。「歴代クイーンは不思議ちゃん」という漫画「ちはやふる」の刷り込みがあったのでどんな方かと構えてたんですけどね。でもこれがかるたの大戦になると鬼のように強いんですよなあ。「ちはやふる」に於ける孤高の高校生クイーン若宮詩暢のモデルとなっているように、強すぎて練習相手を務められる人が徐々に減り、自宅で父と個人練習をしていたというのも驚きます。

 楠木永世クイーンがかるたの勝負の時に努めていたのは、暗記をきっちりすること。競技かるたの場には 50 枚の取り札が並べられ、その配置を 15 分の暗記時間に覚えます。競技かるたの段位が上がっていくと取り札(百人一首の下の句が書かれている)を見ると、決まり字(上の句の冒頭数文字)が「見える」ようになります。訓練により 50 枚の札の配置は 3 分から 5 分で完璧に覚えられるようになっており、札の並びを画像として脳内に刻み込むイメージとのことです。競技かるたは「競技」であるが故に、試合が始まると札は減り、また自分と相手の間を札が移動したりします(「送り札」で検索してね)。つまり最初に覚えた 50 枚の配置は刻一刻と変化する訳で、それをその都度瞬時に覚え直し、読まれる札に耳を澄ませて最初の数音、札によっては子音が聞こえた瞬間、該当する札に高速で手を伸ばし取ります。イベントでは永世クイーンの取りを見ることが出来ましたが、手の動きが見えませんでした。覚えたものを即座に忘れ、また覚え直すのの繰り返しです。それをいかに早く、いかに正確に行うかを練習によって高めたことが本書には記載されています。

 サブタイトルには「競技かるたクイーンのメンタル術」と書いてあり、競技かるたをやっていない人にも応用出来るような記憶術や集中法が書いてはあるにはあるのですが、やはり競技かるたに興味ある人やプレイヤー向けの情報が多いと感じます。むしろ興味ある人が「クイーンてどんな凄いんだろう。競技かるたってどんなんだろう」と思って読むととてもためになる。そして「あー、俺には無理やわ」って思っちゃう(かどうかは人によるけど)。

 わたしは小学生の時に百人一首を 20 首くらいは覚えましたが「ちはやふる」読むまで殆どその存在を忘れており、今年に入ってから子どもが小学校の授業で同じく百人一首を覚え始め、子どもに負けるのが嫌で頑張って 100 首全部を覚えたクチです。覚えた、っつっても上の句を決まり字まで聞いたら下の句をフルで言えるってだけで、下の句(=取り札)を見て決まり字を言うのは出来ません。でも本書にあったように

「みんなが言えない百首を覚えた。ひょっとしたら私は、人より覚えるのが得意なのかも!」

と自己暗示がかかるだけでも、勉強や仕事に良い影響が必ず出てくるでしょう。

との言葉を励みに仕事したいと思います。四十歳目前でも新しいことが覚えられた、と云うのは確かに励みになってるよ(覚えるのに毎日朗詠 CD 聞いて四ヵ月半掛かったけどな!)。

 

JUGEMテーマ:新書

| 実用書 | 17:44 | comments(0) | trackbacks(0) |
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