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書評・三八堂のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます
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2010.06.22 Tuesday
「源氏物語6」大塚ひかり
●本日の読書 2009.12.13 Sunday
「源氏物語5」大塚ひかり
●本日の読書 昏い、昏いよママン! 紫の上が崩御する「御法」から、宇治十帖「早蕨」までを納めた第五巻。源氏も死んで物語もそろそろ仕舞いに入りました。光源氏は確かに嫌いなのですが、彼が物語から退場すると、物語に精彩を欠くのも確か。老人が昔を懐かしむかの如く、随所で「光源氏は良かったよなあ」と思わされる、人物の小粒さが目立ちます。紫式部がそこまで考えて物語を書いているとしたら(多分そこまで考えて書いている)本当にすごい。 紫式部ではない後生の人が作ったとされる三帖は、話の流れとしては番外編、外伝に近いものであり、詳細の辻褄の合わなさが確かに補作と疑われても仕様のないものであるのは大塚ひかりの解説通り。 京を離れて展開する物語としては、源氏が流された須磨・明石編というのもあるのですが、この宇治編はなんか暗い。明石=明かし、宇治=憂しというのも納得出来ます。何が暗いって、源氏の息子(実父は柏木の疑いあり)の薫の性格がねじ曲がっているのが元だと思われます。出生を疑うから性格が暗くなる、というのは好意的な解釈で、私が彼の何を気に入らないかって、「女なんて必要ない、私は仏の世界にしか興味がない」とか言いながら、大君と中の君に執着を見せている矛盾。ああ厭だ厭だ。 2009.09.27 Sunday
「源氏物語4」大塚ひかり
●本日の読書 帯がイカしてます。 「「源氏物語」中の最高傑作「若菜上「若菜下」収録。 女三ノ宮の降嫁を指しているのですが、いいよねこの煽り文句。 「若菜」上下は女三ノ宮の降嫁から、彼女と柏木の密通辺りです。どこが傑作なんやと思っていたのですが、読み進める内に「もうなんつーか凄いよこれ確かに傑作パートだようおおおお(興奮)」と叫ばざるを得なくなっていきます。若いだけでぼんやりさんのみそっかす扱いだった女三ノ宮が源氏の教育によって徐々に大人びて女として熟れていく(嫌らしい言い方だよな)に従って、安泰だった紫の上と源氏の夫婦関係が徐々に食い違いを見せ始めます。そして女三ノ宮の皇女と云う身分に惹かれて横恋慕する柏木の心の乱れ、そして源氏の四十歳祝賀会の描写に混ぜ込んで「何か起こるぞ」と云う予兆が見え隠れする紫式部の言葉の選び方・・・・・・絶妙です。祝いの賀に多用される「乱れ」と云う表現がそのまま今後の波乱を予感させる「乱」に繋がっていくストーリーテリング能力ったらないです。紫式部恐るべし。 2009.04.19 Sunday
「源氏物語 第三巻」大塚ひかり
●本日の読書 さて「源氏」の二巻で、「玉鬘」から「藤裏葉」の帖が収録されています。所謂「玉鬘十帖」がメインですが、次第に光源氏が嫌がられる中年になっていっているのが痛快です。あ、本音が。 2008.12.31 Wednesday
「源氏物語 第二巻」大塚ひかり
●本年最後の読書 さて「源氏」の二巻で、「花散里」から「少女」の帖が収録されています。大体の粗筋で言いますと、朧月夜との密会がばれて源氏は須磨に隠棲し、三年を経て都へ復帰、藤壺が亡くなり六条院の建設までです。きらびやかな源氏の恋愛遍歴から徐々に政治家・中年源氏の物語になっていきます。こうして読んでいくと、世間での源氏物語の印象は本当に冒頭の冒頭が強すぎるのだなあと思いますね。全六巻の二巻で既に物語が難しく落ち込んでいく印象があります。 二巻についての私個人の印象ですが、一巻の七割程度の時間で読了出来た感があります。それは恐らく、二巻から読む人にも親切なように、解説(ひかりナビ)は一巻と重複するところもきちんと書き込んである個所が多く、一巻を読んだ者としては端折り読みが出来るようになっているからだと思います。逆に言えば、一巻を読んでいると二巻は多少くどく感じます。 原典に当たって訳したこの本を読んで特に面白かったのは、最後の六条院建設に関する各解説書の説明です。それぞれの女君(妻)の当てられた屋敷の位置を陰陽五行説に従って考えてみると、どの女君が後の展開に重要になって来るかと云うことが分かるという点です。紫式部は果たしてそこまで考えて書いていたのかと云う疑問もありますが、解説を読むと紫式部は伏線をちゃんと考えて物語を紡いでいるのが分かり、であれば六条院に於ける女君の配置も考えているであろうと自然思わされます。 それともう一つの印象ごとは、物語の中での光源氏の位置付けの変化についてです。格好良くて思いやりも気遣いも出来る完全無欠の理想的な男性として描かれていた源氏が、この辺りから中年の厭らしさや人間的欠陥が徐々に垣間見えて来るのです。これは物語の中心が息子の夕霧、ひいては薫大将へシフトしていく伏線であり、そう考えるとこの段階で紫式部が物語を源氏一代で終わらせるつもりがなかったのが分かります。続きが更に楽しみです。 2008.12.03 Wednesday
「源氏物語 第一巻」大塚ひかり
●本日の読書 2004.06.27 Sunday
「源氏の男はみんなサイテー」大塚ひかり
・「源氏の男はみんなサイテー」大塚ひかり/ちくま文庫:ISBN; 4480039708 いやー、面白かった。源氏の解説本は適度に読んでいる方だと思うけれど、分析の仕方はこの本ピカ一(自分内比較)。世間には源氏の解説本っぽく見せかけて、ストーリーの概括だったり登場人物のまめ知識を寄せ集めた様な本だったりと、「分析」では無いものが多いのである。そこにこれ。原作を熟読して、古文の奥にある『人間の関係性』を見事に暴き出しているのである。 考えてみれば、この試みは現代文学に附いては全く普通に行われている事。所謂国語の授業的な「登場人物のこの時の心情はどうの」「彼の考えの裏には過去のこの体験がこうの」と云う、理系泣かせの例のアレである。如何に古典についてこの様に分析された書物が少ないかと云う事だよな。その点から見ても、大塚ひかりは偉い。 分析内容としては書名通りで、源氏物語に描かれている男性が如何に身勝手で我侭で惚れるに値しない男かと云う事をつらつら並べ書いている訳だが、ダメ部分だけを紹介するなら他の本でもやっている事である。ここで蒙を啓かれたのは、彼らのダメ部分が「何に」起因しているかを分析してある事。例えば光源氏の息子、夕霧。彼は源氏によって大学での教育(当時の貴族では例外的な道)を受けさせられ、その結果頭でっかちの恋愛下手になり、亡き柏木の未亡人、落葉の宮を口説くにも彼女が処女でない事を盾に「そろそろ僕に靡いて下さい」って言うなんて、父親の教育が息子の人格に影響を及ぼした結果である、とブチ上げる。幼児教育が重要な年代に父親と離れて住み(母の葵の上は既に故人)学問漬けであった為に対人関係の築き方が下手であるのだ、とこうである。爽快ではないか。 もうすんごいするする読んじゃいました。現時に少しでも興味のある人には大推薦。結局平安も平成も、家族環境が人格に影響を与え、それは親子関係だけではなく恋愛関係についても言える事を気付かせてくれました。う〜んエキサイティング。長くなっちゃったい。 1/1 |