書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

「源氏物語 第一巻」大塚ひかり

評価:
紫式部
筑摩書房
¥ 1,260
コメント:原文を重視した逐語訳で、解説も充実。源氏物語の粗筋を知る方にお勧め。

●本日の読書
・「源氏物語 第一巻(桐壷〜賢木)」ちくま文庫/大塚ひかり


  古文と云うのは油断できないもので、原文で読むと「見し」とだけあるのが現代文に直すと「性交した」ことを表すのでびっくり。そこら辺をちゃんと訳してあるこの本は、現時点で最も分かり良い逐語訳本です(と勝手に認定)。源氏物語の粗筋をご存じの方に強くお勧めいたします。

 敢えて「既読の方向け」と限定したのは、随所に挟まれる著者の解説、「ひかりナビ」に、登場人物のその後や物語中の類似の展開が書かれている箇所がまま見られるからです。まあ全五十四帖・このシリーズではごっつい文庫全六巻の源氏をここから入ろうと云う人がどれだけおられるか分かりませんが、「読書中のネタばれ厳禁! しかも源氏未読!」と云う方は、別の源氏物語から入られるのが宜しいかと思います。

 著者が前書きで述べている通り、この訳本は逐語訳でありながら敬語を抑えているので、現代語の小説とまではいきませんが、古典の全訳(高校生が読むような書き下し文ね)を読むより遥かに「誰が何をしたか」が良く理解できます。当時の有職故実についてもナビで解説してあるので心配無用。源氏の世界が余すところなく体感できます。

 以下、源氏物語についての個人的雑感をば少々。

 私はこれだけ源氏源氏言っているくせに、源氏物語の訳本は読んだことがないのです。漫画の「あさきゆめみし」だけ。源氏物語の小説なんて沢山出ているじゃないですか、谷崎源氏、与謝野源氏、円地源氏、田辺源氏、瀬戸内源氏……どれも読んでいません。でも最初の通読がこれになりそうで嬉しいです。先行本が悪いと言っているのではなく、著者の大塚氏の言うように、古典は原文で読むのが良いと思っており、でも古文は読めない、かといって物語の行間に訳者の思い入れが追加されて訳された(どきどきする小説風にまとめられた)物語を読むのも偏向しそうだし、学術書や研究所は敷居が高いし、と悶々としていたときに、それらの真ん中を行く訳本が出たのです。しかも好きな著者のものが。天が与え賜うた好機ですよ。

 にしても、読めば読むほど光源氏はいけ好かんなあ。完璧だからって何してもいいってこっちゃないのよ。女性では六条御息所が好きです。とっても嗜みがある女性なのに愛の前には弱くて未練がましいところが非常に人間的だなあ、と。

 更に脱線トークをいたしますと、巻末のちくま文庫ラインナップで一気に欲しい本リストが増えました。やるなあ筑摩書房。以下欲しい本。
・「片思い百人一首」安野光雅
・「文章読本さん江」斎藤美奈子(文庫落ち、待ってた!)
・「文豪怪談傑作選 川端康成集」川端康成・東雅夫編
・「文豪怪談傑作選 森鴎外集」森鴎外・東雅夫編

| 国内あ行(大塚 ひかり) | 23:39 | comments(0) | trackbacks(0) |
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