書評・三八堂

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「日本文学盛衰史」高橋源一郎
評価:
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コメント:これからも著者には日本文学を牽引して頂きたい

●今日の読書
・「日本文学盛衰史」高橋源一郎/講談社文庫:ISBN; 4-06-274781-2


 文字通り「日本」の「文学」の「盛衰史」……いや、勃興史と言った方が近いかもしれない。この文章を著しているこの日本語、これが、たかが百年程度で確立された表記法であると云う事を知らない人は多いのではないか。自分もその一人でした、この本を読むまでは。

 社会科・歴史で習った云々。
『二葉亭四迷の「浮雲」は日本で初めての言文一致体で書かれた〜』
そんな事、知識でしか知らなかったのだが、四迷がその後の日本文学に果たした役割は非常に大きかった。独歩も大学受験の勉強で「武蔵野」を触ったくらいでちっとも啓蒙されなかったが、当時の日本語は「自然を描写する」と云う、今では普通に思える事が「表現として」無かったのだ。それを初めて成し遂げたのが独歩国木田。無駄な文は一文も無く、筋立てから表現、構成まで含めて明治文学を大成させた夏目漱石。伊達に千円札に顔が出ていません。そう云った感じで明治の文豪が艱難辛苦、日本語の表現を生み出してきたのが小説仕立てで書かれているのがこの本。

 わざと大事な事を外して評価してきたのですが、何が凄いってこの本、明治と平成がパラドキシカルに描かれています。分かり易く言えば、石川啄木は伝言ダイヤルにハマって友人から借りた金を浪費し、田山花袋が「布団」で表現したかった事はアダルトビデオの監督に成る事で成就されようとする(本人の志望は兎も角として)。あからさまに現代の物が混ぜてあることで、却って何が本当の事で何が高橋源一郎の創作かは分かり易いのが救いか。

 ストーリー性を持って語られる前半に比し、後半は散文調と言うか日本語表現に対する姿勢を断片的に切り取った一章読み切りの話が多くなり、あの荒唐無稽な「小説」で魅了された自分としては少々物足りなくなる。しかし特筆すべきは氏の夏目漱石「こころ」論。果たして冒頭の一見意味のない一文は何を示唆しているのか、果たしてKとは誰だったのか。一読の価値はありますよ。

 感想としてはまとまっていませんが、少しでも明治の作家、日本語表現に興味があるのなら読んでみて絶対に損はない一冊。本を読みつけない人には敷居が高いと思うが、あたしはこの小説における、文豪が成し遂げたかった事への現代への振り替え、日本文学の盛衰史としてのアプローチが面白いと思いました。
| 国内た行(高橋 源一郎) | 11:01 | comments(0) | trackbacks(1) |
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