書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「神無き月十番目の夜」飯嶋和一
●今日の読書
・「神無き月十番目の夜」飯嶋和一/河出文庫


 ……んー、しんどかった。何がしんどかったってのを分かって頂く為には「汝ふたたび故郷へ帰れず」を読んで頂く、又はその拙感想文など読んで比較して頂ければ良いかと思うのですが、この本、特に最初、慣れるまでが辛かった。

「汝ふたたび故郷へ帰れず」は綺麗な語り口の、それでも身を抉るボディーブローを与えてくる文章で綴られた珠玉の現代中篇集でしたが、今回は歴史物。しかも悲惨。先ずは本の裏書きを転載しますな。
『江戸初期、北関東でひとつの村が地上から消えた。「サンリン」と呼ばれる聖なる空間で発見された老人から赤子までの骸は三百余。ここで何が起きたのか。歴史の闇に葬られた謎の“大事件”を甦らせて、高い評価をえた暗黒と戦慄の巨編』
……そう、もう冒頭で分かっちゃうのですがこれは江戸中期の一村虐殺譚で、読者は「ああこの人もこの人も、最後には皆死んじゃうのかー」と云う思いを抱え乍ら読み続ける訳ですよ。しかも時代小説なもんだから文体も硬くて、「汝〜」が原稿用紙に万年筆で書き綴られた小説だとするなら、「神無き月〜」はノミ一本で彫られた怨念の石碑を読んでいる印象すら受けます。いや、それでも凄い上手でもう何も言えないのですがな。暗くて辛い話なのにどう仕様も無く先が気になるのは筆者の上手さで。

 基本的に飯嶋和一の小説は全て勧善懲悪の趣がありますが、この小説は村と幕府を描いた群像劇であるから誰か一人に肩入れして読むと云う風ではなく、出てくる人を、こいついい奴、こいつは莫迦、と振り分けて、いい奴を窮地に陥らせる莫迦に悪態を吐き吐き読んでいく風になります(しかしその思いにも裏には「最後には……」ってのが付き纏ってるんだがな)。ホントこれね、どうにかならんかったんかと悔やまれて仕様が無い事件ですよ。いや、言っても仕様がないけど。しかも(私の方で裏を取ってないけれど)歴史から抹殺された本当の話だとか。それを文字通り見てきた様に甦らせたのであれば、その功績や如何。歴史物に免疫があり重厚な話をお好みの方にはお勧め。話の結末から、余り良い小説でなかった印象を受けるような事を書きましたが、その文章の厳然たる美しさや血の通った人物描写、ディテールの書き込み等には舌を巻きます。もっと評価されて然るべき作家さんだと思います。惚れてるんで「始祖鳥記」も「雷電本紀」も購入済みですよっと(「黄金旅風は?」と云う突っ込みは受けません)。
| 国内あ行(飯嶋 和一) | 00:06 | comments(0) | trackbacks(0) |
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