書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「踊るナマズ」高瀬ちひろ
●本日の読書
・「踊るナマズ」高瀬ちひろ/集英社 ISBN : 4-08-774793-X


 表題作は第 29 回すばる文学賞受賞作。「踊るナマズ」と「上海テレイド」の二つの中篇が収録されています。装丁が綺麗なので図書館で読了。変わった作風の人だと思いました。「踊るナマズ」は、ナマズについての言い伝えがありナマズをトレードマークとしている町に育った女性が、出産を目前に控えて胎児に語るナマズの言い伝えの思い出。ナマズのように胎内を動く子供に対して語られるのは、町の言い伝えではなく、主人公が中学生の頃にさる老人から語り聞かされた殆ど猥談と言える物語です。

 先ず特筆すべきは対話が殆ど無い事。いや、登場人物はちゃんと対話しているのですが、小説には普通に附いているかぎ括弧での対話文が皆無です。会話は括弧がないまま地の文に含まれており、従って改行が少なく一段落が長いです。しかし読むに当たってストレスは少なく、そう云う点では上手な文章だと思いました。物語の結末は割と冒頭で読めましたが、老人が細切れに語る伝説への興味だけで読者を引っ張れるのもまた面白いやり方と云うか何と云うか。不思議な空気の小説でした。

 同時収録「上海テレイド」も殆ど括弧による会話文はなく、万華鏡作家の由利さんによる一人語りで物語は進みます。万華鏡=カレイドスコープに対してテレイドスコープと云うものを知らなかったのですが、万華鏡が筒の中に封じ込められた具材の作る模様を眺めるのに対し、球形のレンズを通して外の風景を三面鏡に写して眺めるものであるよう。父の土産のテレイドスコープを間に置いて展開する、姉と弟のタブーに関する物語です。話の素っ頓狂さからわたしは「踊るナマズ」の方が好きですが、「上海テレイド」の生活感のなさは昔の小川洋子の作品にも通じるところがあり、好きな人は好きだろうなあと思わされます。出たての方なので、今後の作品も読んでみたいと思います。
| 国内た行(その他) | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
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