書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「猫の客」平出隆

●本日の読書
・「猫の客」平出隆/河出文庫

 あなたたち、そんなにその猫が好きですか。

 と思わず問いたくなるような小説と言うより随筆です。文章は流麗で、翻訳版がフランスで三万部売れたのも納得です(その割に日本での知名度はさほど高くないようですが)。かく言う私も文庫の表紙買いでしたけれど、外すことを予想して読み進めるうちに、その雰囲気のある文章に自然と馴染んで「いい買い物だったな」と思いました。

 その不自然な道の折れ曲がり方から「稲妻小路」と名付けられた郊外界隈に住む著者夫婦の借家に、ある日を境に子猫が訪れるようになります。チビと名付けられたその猫は隣家の飼い猫でありながら著者の家に出入りし、かなり長い時間を過ごしています。その小さき獣との交流、別れがひたすら淡々と綴られる話です。それだけと言って仕舞えばそれだけなのですが、随所に挟まれる日本家屋の描写、大家のおばあさんとの交流、季節の移ろいが話に潤いを与えています。何だろうこの感覚、水墨画をずっと眺めているような印象です。

 堀江敏幸の文章世界に近いです(好みで言えば、やはり堀江さんですが)。

 淡々としていると云うことは裏を返せば起伏がなく退屈に感じる人もいるだろうと云うことですが、割と好きです、この落ち着いた文章。著者の住まいの描写が細かいので、ゆっくり読むと円ぐぁからの風も感じられるかと思います。ただ、読み手の私に伝統的な日本家屋の作りの知識が不足しているので、所々用語が分からなかったりしたのが残念です。もっと堪能出来る話の筈なのに。

 また別の作品が出たら読んでみたいです。

| 国内は行(その他) | 00:11 | comments(0) | trackbacks(0) |
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