書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
「ブラックペアン1988」海堂尊

●本日の読書
・「ブラックペアン 1988(上)(下)」海堂尊/講談社文庫


 うん、今回も面白かったです。宝島社文庫「チーム・バチスタ」シリーズでお馴染みの高階病院長の若き日のエピソードです。学生時代の田口医師(「チーム・バチスタ」他)、速水医師(「ジェネラル・ルージュ」)、島津医師(「チーム・バチスタ」他)もちょこっと登場し、「あ、この人知ってる」と優越感を感じることが出来ます(誰に? まだ他作品を読んでいない見ず知らずの読者に)。

 1988 年の東城大学病院。「神の手」を持つとされる佐伯教授の元に、日本の外科手術の権威とされる帝華大から高階講師が派遣されて来る。一見左遷とも取れるその人事だが、高階講師は「スナイプ 1988」なる器具を使用して、現在佐伯教授しか執刀出来ない難しい食道癌手術を簡易なものにし、術数を増やすと言う。果たして高階はあだ名通りの「ビッグマウス」なのか、帝華大からの刺客なのか? 凄腕だが人格に問題のある渡海医師も絡み、外科医一年生・世良の視点で語られる病院の内部をご堪能あれ。

 今作はミステリーではなく、外科に携わる医師の葛藤や確執が主です。

 タイトルにある「ペアン」は手術器具の名称で、物語上の重要なキーワードになるのですが、それがどんな形をしているものなのか良く分からなかったので、クライマックスのシーンを読みながら想像しても、手術シーンがぼんやりしていたのはひとえに自分の所為ですな。

 高階と渡海の対決に象徴されているのですが、この物語の軸の一つに「技術 VS 装置」というものがあります。外科分野において手術の技術を磨くことは勿論非常に重要ですが、装置を使用しての手術で未熟な腕前をカバー出来るのであれば、そう云うものを導入するのもやぶさかではないと個人的には思います。しかし、そういった便利キット(敢えてそう云う軽い表現を使いますが)を普及させることで医者の技術が低下し、装置の不具合→装置を使用しない緊急手術へ切り替え→医師の技術不足により対応不可能、と云う、物語中で佐伯教授が展開する論にも一理あります。装置を普及させながら外科医が技術を磨くことのできる環境があれば良いのですが、あくまで相手は生身の人間、手術の失敗が即人命に繋がるところで、そういう実験的なことは出来るものではありません。現代医療界が内包する問題を、エンターテイメントとして描き出す著者の試みは興味深いものです。問題啓発のみでなく、小説としても面白いですしね。

| 国内か行(海堂 尊) | 22:34 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | 22:34 | - | - |









http://38-do.jugem.jp/trackback/464