書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

「風が強く吹いている」三浦しをん
●本日の読書
・「風が強く吹いている」三浦しをん/新潮文庫


 久し振りに気持ちの良い青春小説を読みました。殆ど素人同然の十人の大学生たちがいきなり箱根駅伝に挑戦すると云う話です。冒頭がいいですよ、コンビニでパンを万引きして走って逃げる蔵原走(カケル)の走りに魅せられた清瀬灰二(ハイジ)は、彼を自転車で追いかけて併走しながら「走るの好きか?」と尋ねるのです。見たい、映像で見たい(映画化しています)。

 行きがかり上、家賃三万円(但しボロボロ)の竹青荘の全支配権を円満に握るハイジに走るフォームを見込まれ、そこに入居することとなった寛政大学一年生のカケル。個性的な十人の住人と新しい生活をスタートさせようとしていたところ、ハイジがいきなり宣言する。「みんなで箱根駅伝に出よう」。陸上経験があるのはハイジとカケルともう一人、その他七人が陸上経験がなくしかもメンバーは補欠無しのぴったり十人。鮮やかにそれぞれのメンバーの個性を引き出し、時に脅し時に褒めて皆を操るハイジに乗せられて、メンバーたちは徐々に走ることに本気で向き合うようになっていきます。

 てゆーかハイジさんが色々と完璧すぎて彼一人に物語を持っていかれますなあ。カケルはいわゆる才能に恵まれた一握りの天才なので、その他のメンバーは彼に驚嘆し、憧れ、またその天才なりの孤独を垣間見て心を寄せていく様がいい言葉を使って描かれています。で、主人公で天才なのに、カケルよりもハイジの方がキャラクターとして魅力的に映って仕舞います。逆に言えば、ハイジを指導者として完璧にしないと素人集団が箱根に挑戦、って無謀すぎるからとも思いますけれどね。あと、三浦しをんはコネタが面白いので、ツッコミとかも読んでて楽しい。

 三浦しをんはかなり昔から箱根駅伝に挑戦する若者たちの物語を書きたいとずっと温めていたようです。以前読んだエッセイに温めているアイデアの骨子が書かれていてそれを今猛烈に読み返したいです。多分「妄想炸裂」だったと思うのですが、今手元を探してもないので臍を噛む思いです。そのエッセイ中の粗筋は、物語として読めるものでありつつも BL(ボーイズラブ。やおい。ホモ物語)としても読めることが三浦しをん自身によって注釈として付けられていて、「風が強く〜」と照らし合わせたくて溜まらんです。あああ、どこやったんだろあのエッセイ。

 因みにそのエッセイを読んでいても読んでいなくても読み取れることとして、カケルとハイジはお互いにお互いを尊重し称えあい労りあいぶっちゃけ愛しあってるんですが、どっちが攻めだか分かりません。
| 国内ま行(三浦 しをん) | 00:46 | comments(2) | trackbacks(0) |
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なんでしたっけエッセイ。わたしも先にエッセイを読んでいたので吹き出しそうになりました。
どれだけベタでも王道な展開でも、ひとりひとりが丁寧に書かれている小説は面白いなあと思い知らされました。
あ、私の推しメンは神童です。(聞かれてない)
| はるひなた | 2011/07/25 1:02 AM |
多分「妄想炸裂」なんですが、見つからないですー。
「極め道」には載ってなかった。ああ、照らし合わせたいです。

そう、ベタと言えばベタなんですがいいですよね。

わたしの聞かれていない推しメンはユキです。
| summer | 2011/07/25 10:36 PM |









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