書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「流跡」朝吹真理子
評価:
朝吹 真理子
新潮社
コメント:文字から始まる幻想譚に、流されゆく読者

●本日の読書
・「流跡」朝吹真理子/新潮社


「迷宮物語」と云う伝説的なアニメ映画があるのですが、それの「ラビリンス ラビリンス」と云う作品の雰囲気にとても近い。あと、多和田葉子の小説にも近い。読む人を選ぶ、大型新人のデビュー作です。

 小説を読んでいるのに内容が頭に入ってこず、文字がつるつると滑って行くように感じている人物の独白で物語が始まります。一行アキを通過すると場面はいきなり変わり、夜更に運航する船の船頭の話、聳え立つ煙突の幻覚を雨の日にのみ見る男の話、来ぬ舟を待ち異種と交わる女の話、と脈絡なく幻想譚が「流」れていき、掉尾、場面は再び文字と格闘する人物の独白へ戻ります。あまり本に馴染みなく、芥川賞の名前に釣られて読んだ人は「何これ、意味分かんない」で終わりそうな一作です。でも力がある。わたしはこの雰囲気、結構好きです。

 古風な言葉が散見され、文章の書き手に教養の高さが見られます。そして幻想世界の物語であるがゆえに妙な擬音が多いのですが、どうしてこの言葉を思いついたか、それが不思議としっくりくるのです。例としては、大量の鰻が地面に潜って行く音を「ヲボ、ォボォボォボ」とか、大金魚の囃し言葉が「はれ、ひやらひやら。」とか。何か心地いいんですよ、声に出して読むと。

 個人的には、敬愛する堀江敏幸氏が選考委員を務めた時のドゥ・マゴ文学賞受賞作であるというのがジェラシー。

| 国内あ行(その他) | 03:35 | comments(0) | trackbacks(0) |
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