書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里
評価:
米原 万里
角川学芸出版
コメント:ソビエト学校時代の親友三人との思い出と、彼女らを訪ねる旅

●本日の読書
・「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里/角川文庫(Kindle版)


 数年前に急逝された米原万里さんについてはその文章への評価をそこかしこで目にしていたにも関わらず未読でしたが、今回楽天 kobo のセールに追従した Amazon の角川セール(えげつないよな)に伴って Kindle 版が廉価で購入出来たので購入しました。ロシア語の通訳をされた後にエッセイの名手として知られた氏の著作は多くありますが、本作は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しており代表的一冊とされています。プラハのソビエト学校で少女期を過ごした著者が、在学中特に仲の良かったギリシア人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカと云う三人の少女との思い出を語り、大人になってから彼女らを探し訪ねる道程について書かれています。

 本編は「リッツァの夢見た青空」「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」「白い都のヤスミンカ」と、友の名と色が織り込まれています。ギリシア人でありながらギリシアに一度として行ったことがなく、その青空に憧れる女優志望のリッツァ、ルーマニアの外交官の娘として貴族的な環境で暮らしながらそれを不思議とも思わない虚言癖のある愛国者アーニャ、思慮に長け落ち着いた優等生ながら内に誰よりも強い情熱を秘めて画家を目指すヤスミンカ。三名のうち、主人公=著者マリが最も友情を感じ大切に思っていたのはヤスミンカであるのは一読して明らかですが、タイトルに「嘘つき〜」が採用されているのは恐らく言葉の面白さを優先したからだと思います(題名が「白い都の〜」だったらやはり地味だ)。

 十三歳でマリが日本に戻って彼女らと地理的に離れた後は、文通で連絡を取るしかありません。その後ソ連が崩壊し、内戦や民族紛争の勃発で郵便物が届かなくなり、また一家が素性を隠して亡命したりすると、彼女らに会いたいと思っても電話すら繋がらなくなります。それぞれの章の後半は、著者が長じて後にロシア語通訳として東欧圏に行った際に彼女らを探す旅が綴られており、政情不安は人生をいとも簡単にひっくり返して仕舞うのだと云う事が良く分かります(ああ日本人で良かった)。伝手と偶然に導かれて友人に再会し、あの頃の夢と現在の違いに仰天したり、少女時代の思い出を辿り直して真実を知ったりする情景が硬質ながらユーモアを交えた筆致で描かれています。特に「白い都のヤスミンカ」は強い余韻を残す素晴らしい一章なのでお勧め。

 てゆうかここまで偉そうに書きましたが、わたしソ連・ロシアについての地理的・歴史的知識が全くないです。こんな状態で読んですみません。プラハってどこの都市? 「プラハの春」ってなんだっけ? チェコスロバキア? チェコスロバキアってチェコとスロバキアに分かれたよね? てゆうかどこら辺にあるの? ……マジでこんな感じです。何故プラハにソビエト学校があるのか、ソ連と東欧諸国の関係、ボスニア・ヘルツェゴビナの民族紛争の悲劇等の常識がないので、大人になったヤスミンカがユーゴスラビアに居ると書かれていてもそのヤバさが分からない、読みながら社会人としての自分は相当まずいんじゃないかと思いました。

 ロシア・東欧圏への知識を増やす下心を秘めつつ、同時購入した「旅行者の朝食」もいずれ読みたいと思います。
| 国内や行(米原 万里) | 04:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
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