2023.05.03 Wednesday
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書評・三八堂のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます
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2014.03.07 Friday
「はなとゆめ」沖方丁
・「はなとゆめ」沖方丁/角川書店 ああー角川の電子書籍 70% OFF セールの時に「光圀伝」三巻セットも買っておけば良かったー! と云う魂の叫びはさて置き、「天地明察」が面白かったので手を出した本作は「天地明察」の面白さに敵いませんでした、あくまで私見ですが。でも読んで良かった! 少女漫画雑誌「花とゆめ」とは何の関係もないこの「はなとゆめ」は、「枕草子」で著名な平安時代の女房、清少納言の半生を描いた小説です。 枕草子は高校古文で取り上げられていた部分のみ飛び飛びに読んで通読はしていませんが、この小説全体が枕草子に収録されなかった下書き原稿を口語訳したかのような印象を受ける文で読んでいて不思議な気分になります。昔宮中で鳴らしたおばちゃんの回顧譚を聞いている感じ。読む前は知識として、藤原道隆・中宮定子・清少納言陣営はいずれ、藤原道長・中宮彰子・紫式部陣営に負けることを知っており「定子は気の毒、小納言うざい」くらいの適当な印象しか持っていませんでした(ひど)。ですがこの小説を読んでその気持ちが「中宮定子すげえぇぇ!」に変わりました。 と定子を褒めつつ、主人公で語り手でもある清少納言にはどうにも感情移入しきれませんでした。理由は以下二点です。 ・清少納言の言動に、アピール強すぎる感や小手先の小賢しさを感じて好きになりきれない ・彼女の主君たる中宮定子がいずれどうなるのか知っているので、感情的に防護線を張って読んじゃった 前者について、小納言は生意気に思われやすい態度を自覚しており、自身の生い立ちや定子への思いがこういう言動の由来であることを文中に繰り返し述べています。が、どういう理由があってもわたしは「身近にこの人がいたら鼻に付くだろうなー」と思っちゃうので、つまりはわたしの好みの問題です。殿方からの手紙への意表を突いた返しや漢文の素養を基とする言動も、全ては主君である中宮定子に心酔し彼女の存在を盛り立てるためなのです。とは言えやっぱり嫌味な印象は受けるよなあ。 後者は、例えばどんなに血沸き肉踊る小説でもそれが会津白虎隊の物語ならば後半読み進めるのが辛い、みたいな感覚です。「来るぞー、不幸が来るぞー」と思いながら読むので、肩入れし過ぎて辛くならないように一歩引く感じ。この辺りは飯島和一先生の「出星前夜」を読んで検討します(天草四郎の話)。 内裏に於いてこの世の「華」を目にし、完璧な主君である中宮定子に一目置かれて彼女を守り抜く決意を固める小納言。一人の人間を愛し抜く「夢」を心に据えて戦い抜く物語は、華やかな平安絵巻と言うよりは、一人の偉大な王とその忠臣の物語です。 コメント
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