書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「ケルベロスの肖像」海堂尊
●本日の読書
・「ケルベロスの肖像」海堂尊/宝島社文庫


 バチスタ・シリーズ完結編。と思ったら先日見た新聞広告でスピンオフの「カレイドスコープの箱庭」って出てたぞ、終わんないんじゃないのか。

 それはさて置き、今作を読む前には「螺鈿迷宮」「ブラックペアン1988」を読んでおいて下さい。今気付いたけれど二作とも宝島社文庫じゃないね。

 いよいよ Ai(オートプシー・イメージング。非破壊での死亡時画像診断)の本格運用を目指し、東城大付属病院に Ai センターが建設されました。センター長は何故か不定愁訴外来の田口医師が就任する運びとなります。そんな折、東城大に脅迫状が。「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」、ケルベロスの塔とは恐らく新設の Ai センターを指す言葉と予想され、差出人に以前桜宮病院の崩壊と共に死亡した筈の碧翠院小百合/すみれ姉妹の影がちらつきます。過去の事件発生時、姉妹と因縁があった田口医師は事件を再調査し始めます。

 遺体の死因究明に関しては破壊検査である解剖(司法・法医学科)と非破壊検査である Ai(医療・放射線科)の対立の構図がシリーズ初期より描かれています。Ai センターの主導権をどちらの部署が担うかと云うことで権力闘争があり、著者は Ai の普及に努めている立場があるので後者のメリットが詳細に述べられています。遺体の疑わしい箇所を切り開かなくてはならない解剖よりも、遺体のスキャニングで死因を究明出来る Ai の方が利用価値が高かろうと云うことは思います。もし外傷が目立たなかったらその箇所を解剖することはないかも知れませんしね。まあ、そう云う目立たない外傷も見逃さないのがプロなので、解剖医をけなすつもりはありませんし、Ai も放射線医師の読影が未熟であれば真相を見逃す危険性はあります。医者の技術、経験が同等に優れているとしたら、非破壊の Ai を実施した後に解剖で確認するのが、死亡原因の究明には鉄壁の備えと考えられますが、実際の医療はどうなっているのでしょうか。Ai は設備投資費がすごそうなので、普及するにはまだ時間が掛かるのが実際なのではないかと想像しています。

 前作の「アリアドネの弾丸」がミステリとしても白鳥の口攻撃としても痛快で読み応えがあったのに比べると、話をまとめに入っている分、痛快と言うより寂寥と言う感じがしました。白鳥、殆ど活躍しないし(ウザキャラだけど出番が少ないと寂しい)。大オチも「そ、そう来る? この人選は考え直すべきでは?」と思いました個人的に。物語の終盤、脅迫状を出した犯人と対峙するシーンで回収されていない伏線があるので、きっと「カレイドスコープ」はこの事件の天馬大吉視点になるのかしらと想像しております。取り敢えずシリーズ完結お疲れさまでした! 本作を原作に映画も完結編が公開されるようですが、このシリーズの解説として「いわゆるバディもの」と書いてあるのを読むまでバディものだと気付きませんでした。バディものって互いに互いを意識しているライバルコンビと云う印象でいたので、白鳥と田口の一方的師弟関係もバディ扱いなのか、あ、そういや「相棒」での右京さんと甲斐君ってこの関係に近いな、だとするとバチスタも確かにバディものと考えられなくもな……(果てしなく話が逸れていく)
| 国内か行(海堂 尊) | 21:08 | comments(1) | trackbacks(1) |
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ちょっと慌しいなと思える内容でした。
でも、読み物としては満足しました。
完結編でしたが、今後の展開が楽しみです。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
| 藍色 | 2015/09/29 1:22 PM |









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「ケルベロスの肖像」海堂尊
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| 粋な提案 | 2015/09/29 1:19 PM |