書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「舟を編む」三浦しをん
評価:
三浦 しをん
光文社
コメント:まじめくんかわいー。

●本日の読書
・「舟を編む」三浦しをん/光文社


 本屋大賞を受賞し映画化もされた有名作、辞書を作る人々のお話です。出版社の名誉と意地と沽券に関わる辞書ですが、専門の編集部を持つ出版社が少なくなっている中で玄武書房の辞書編集部・荒木は、目の前に迫った定年退職の後に辞書「大渡海」の編集を任せられる人材を探しています。

(営業部女子社員、部屋の奥に向かって呼ぶ)「まじめさーん」
あだ名が真面目? どんなやつなんだ? ぼさぼさ頭のうだつの上がらない男が来たぞ。
「まじめです」
(名刺)馬締光也

と云うことで辞書編集部に配属になった馬締君の、言葉との格闘が始まります。月から降りて来たような美しいヒロインも登場し、不器用だけど一途に真面目に、馬締君は仕事と恋に邁進します。彼は元々言葉に対して真摯に向き合う辞書編纂に非常に適したキャラクターだったのが幸いし、荒木や監修の松本先生と毎日侃々諤々の討論を繰り返し、辞書をゆっくりしかし着実に編纂していきます。辞書に冠せられた「大渡海」の言葉通り、大きな船が少しずつ海を進むように。

 辞書の編纂が想像を絶する長さと根気良さで地味にちまちまと進められていくことを知らしめ、何気なく使っている辞書の成り立ちを意識させただけでも本書の存在意義は十分果たされたと思うのですが、ここは敢えてわたし、西岡に注目したいと思います。西岡は馬締が配属されるより前から辞書編集部にいた先輩編集者ですが所謂チャラ男で、荒木によく叱られるし自分が辞書に向いているとは思っていません。高いコミュ力でどこの編集部でもコミットし生き抜いている彼ですが、馬締の出現で己の存在価値を見つめ直すことになります。辞書の言葉集めや言葉の定義、構成や校正などは根気のいる作業なので馬締のような性質の者が向いているだろうことは素人も容易に察せられるのですが、実際は西岡が得意とするような渉外の仕事もあるんですね。教授への原稿依頼と督促、装丁業者やデザイナー、製紙業者との打ち合わせ等々。ですが西岡は辞書の内容に関するところにばかり目を向けているので、自分が役に立っている実感がないのです。そんな彼がある日荒木に呼び出されます。西岡の動きと彼の心境の変化にご注目下さい。著者はこう云う脇役の機微を描くのが上手だなあ。

 数年後の後半からは怒涛の展開です。「大渡海」は無事出版し、世間に出帆することが出来るのか、乞うご期待。読後感は爽やかで、気持ちのいい小説です。

 さ、次は映画見るんだー。そして馬締君馬締君書きすぎていますが、段々と馬締が「馬謖」に見えてきました。泣いても馬締は斬られません。
| 国内ま行(三浦 しをん) | 00:18 | comments(1) | trackbacks(1) |
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今回も読みやすくてあっという間に引き込まれました。
真っ直ぐな小説でユーモアもあり、とてもたのしく読めました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
| 藍色 | 2015/10/06 4:04 PM |









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「舟を編む」三浦しをん
玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山
| 粋な提案 | 2015/10/06 4:02 PM |