書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「ナニワ・モンスター」海堂尊
評価:
海堂 尊
新潮社
コメント:一般市民が受け取る情報は既にして操作されている

●本日の読書
・「ナニワ・モンスター」海堂尊/新潮文庫


(結局のところ、海堂作品は全部読むしかないのだ)解説・津田大介

 本作はインフルエンザ・パンデミックに関するメディア情報操作と霞ヶ関官僚の利権に関するお話です。新型インフルエンザ「キャメル」の日本上陸を水際で阻止すべく展開される成田での検疫強化を尻目に、渡航歴のない人間が国内でキャメルを発症……もう既に多くの人の記憶から抜けてしまっていますが、2009 年春頃に国内を騒がせた A/H1N1 新型インフルエンザの蔓延が下敷きになっています。文芸誌連載で読んでいた人はすごく「今まさに起こっていること」との感じが強かったでしょうなあ。著者は現実事件を作品に取り入れて、その根幹にある医療システムの問題点と歪んだ情報操作について問題提起を繰り返していてお見事。わたしなんか、すぐにメディアに踊らされる方だからね、思慮が足りないからね。

 海堂尊は怒ってる。この国のいろいろな歪みに。

 第一部は地域医療を支える町医者の視点で新型インフルエンザがメディアの情報操作のより市井の人々を巻き込んでいく様を描き、第二部は検察官の正義を描き、第三部は自治体の敏腕首長の理想と現実を描いています。どの章も興味深いのですが、第一部が特にエンタテイメントとして面白かったです。キャメルがいかに危険かと云う情報が蔓延し、町に無遠慮な取材が訪れ、地域がおかしくなっていく様が。それを阻止する医者たち、黒幕の活躍を期待してどんどん読み進めて仕舞います。登場人物の未決着の過去の話などが残っているので次回作もきっと読んじゃうんだろうなあ。明らかに橋下徹現大阪市長モデルの村雨知事の活躍も望まれますし(しかし執筆時は知事だったんですよね橋下さん)。

 そして話の筋とはちょっとずれるのですが、第三部の地方自治体に於ける医療施策のモデルとして、解剖率 100% の町、舎人町という自治体が登場するのですが、この町のモデルになった自治体が実際に存在するということが驚きです。福岡県の町だそうですが、「剖検率 100% の町ー九州大学久山町研究室との 40 年」(祢津加奈子/ライフサイエンス出版)という本に興味が湧きます。

「ケルベロスの肖像」で一応の完結を見た田口・白鳥のバチスタシリーズですが、本作は旧知の登場人物にスポットを当てた同時系列の別の作品です。文庫帯には「新章開幕」の字が踊りますが、彦根を主人公にしたシリーズになるんでしょうかどうでしょうか。本作続編の「スカラムーシュ・ムーン」は新潮誌上で連載中とのことですが、バチスタほど長くならないんじゃないかな、彦根の独壇場なので(頭良すぎるやつが主人公だと話が長くならない気がする)。
| 国内か行(海堂 尊) | 11:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
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