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書評・三八堂のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます
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2014.07.31 Thursday
「創作の極意と掟」筒井康隆
・「創作の極意と掟」筒井康隆/講談社 筒井さんは凄いなあ。「ロートレック荘殺人事件」であっと驚くトリックを、「虚構船団」でホチキスが針を吐く様をコココと表現し、「残像に口紅を」で小説内で使える文字を制限し、「朝のガスパール」で読者の要望を物語の進行にほぼリアルタイム反映させ……とわたしが読んでいるだけでも多くの試みを小説内に持ち込んでいるが、まだまだ小説と云う表現形式の可能性を探り自らの作品で実験を続けている文学界の巨匠であらせられる筒井康隆氏。そんな氏の創作の極意と掟であるからして読まずにおられましょうか。どうでもいいですが「掟」と云う漢字見ると必ず掟ポルシェを思い出すわたしです。 小説を書く際に意識するべき内容が「凄味」「色気」「揺蕩」など熟語で 31 章にわたり惜しみなく指導されております。所謂ライトノベルやエンターテイメント方面のノウハウではなく、純文学向けとして「使える」知識であり、用例として取り上げられている古今東西の小説に自ずと興味が沸きますので、本書は創作についての心構えを説く書でありながら情報豊かなブックガイドとしても機能しています。因みにわたしが読みながらハイライト付けた「いつか読みたい本」は以下です(ハイライトとは Kindle における付箋みたいなものです。こう云うとき電子書籍便利)。 「虚人たち」筒井康隆 「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ 「文体練習」レーモン・クノー 「国民のコトバ」高橋源一郎 「ダンシング・ヴァニティ」筒井康隆 特に「虚人たち」は持ってるのに読んでいないのでいつか読みたいです。と云うか SF 時代の筒井本は父のライブラリーにほぼ全部あるので端から潰していきたいところ。そしてカルヴィーノも当該書じゃない本ではありますが持ってるのに読んでないです。世界にはまだまだ読みたい本がありますな、幸せですな。 圧巻は後ろから二番目の章「反復」です。他の章が「群像」の連載だったのに対してこの章と最終章の「幸福」のみ「新潮」に掲載されたもので、「反復」は 2008 年当時の新刊「ダンシング・ヴァニティ」についての表現意図を自ら解説した文章なのです。何がいいって、小説の中で反復を多用すると読者が反復に隠された意味をそれぞれ想像し、小説に愉しみを見出すからということです。言われて考えてみれば確かに、文中で同じ色のアイテムばかり出てきたら何か意味があるんじゃないかと思うし、タイム・パラドクスのような一種不吉な雰囲気を感じたりすることもあるし、そして何より著者に指摘されるまで気付かなかったのですが我々は日常生活では過去の体験を何度となく思い出して恥ずかしく感じたり懐かしく感じたりして、時によっては記憶を歪めたり都合のいいように改変したりしているんですよね。そんな人間のファジイな感覚を忠実に描写した小説って確かに見かけないです。小説における反復の効果、今まで気付きませんでした。筒井先生ありがとう。そして今後とも実験的な小説をぜひお願いいたします。 コメント
大変面白かったです。著者の博識がよくわかります。
未読のいろんな小説に一度、目を通してみたくなりました。 トラックバックさせていただきました。 トラックバックお待ちしていますね。
| 藍色 | 2015/02/13 3:34 PM |
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これは作家としての遺言である――。創作歴60年の筒井康隆が満を持して執筆した、『文学部唯野教授』実践篇とも言うべき一冊。
作家の書くものに必ず生じる「凄味」とは? 「色気」の漂う作品、人物、文章とは? 作家が恐れてはならない「揺蕩」とは?
「小説」という形
| 粋な提案 | 2015/02/13 3:31 PM |
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