書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「華竜の宮(上)」上田早夕里
評価:
上田 早夕里
早川書房
コメント:オーシャン・クロニクル第一部

●本日の読書
・「華竜の宮(上)」上田早夕里/ハヤカワ文庫JA

 分冊の本は本来通読してから感想書くべきなんですが、世界観が壮大であまりに面白かったのと、上巻だけでも相当長いことの合わせ技で一冊だけで感想書きます。まだ物語はクライマックス前です。壮大なる未来 SF の魅力を是非に伝えたいです。

 著者が「火星ダーク・バラード」で小松左京賞を受賞した時から気になっておりましたが、読むのはこれが初めてです。この「華竜の宮」は「オーシャン・クロニクル第一部」と銘打つだけあって、遥か未来の地球人の生態をオリジナルで予想もつかない方向へ進化させた世界における物語で、まずはその生態だけでも馴染めないのにそこに闘争と共生を絡ませたストーリー展開が大変魅力的な SF です。

「リ・クリティシャス」と呼ばれる大規模地殻変動で陸地の大部分が海中に沈み全地球人口が二千人まで激減した後の人類は、従来の陸上人と、科学の粋を凝らした遺伝子操作によって海上で生活することが出来るようになった海上人に分化しています。海上人は「魚舟(うおふね)」と呼ばれる巨大な魚の一部を内部に削って居住区として整備し、魚の内部で暮らしています。

 どうよ、この設定だけで相当ぶっ飛んでいますよ。

 しかもこの魚舟、適当な魚を捕まえて家にしているのではなく、海上人は必ず双子を出産し、一人は海上人として生まれ一人は魚舟として生まれます。人間が魚を生むんです。どんだけ妙な方向に進化しているのかと思いますが、このあり得なさもリ・クリティシャス以降の丹念な世界の動きの描写を挟むことによって妙にリアルに感じられるようになっており、自然に物語は世界へ入りこんで行けます。併読している「ダーコーヴァ年代記」よりもよっぽど異世界の話を読んでいる感じです。

 陸上人で海洋公官に勤務する青澄は陸上人と海上人の間に起きる紛争を解決するのが主な役目の公務員です。彼は非常に真摯な人柄で過去に数多くのトラブルを誠意を持って解決しています。知る人ぞ知る彼の働きに、海上人の巨大コミュニティの女性オサ、ツキソメが接触を試みます。遺伝子操作によって変容した地球生態系では多くの奇病が発生しており海上人は常にその危険に晒されているのですが、海上人は国に属すると納税の義務が生じるために国籍を持たない(タグなし)ままでいることも多く、それは奇病のワクチン接種が出来ないことに繋がっています。日本国はツキソメの集団を日本に所属させて税収を上げようと試みますが、ツキソメは海上人と陸上人の両方が利用できる海上コミュニティを建設しその収益を日本国に収めることでタグなしのままの生活を送ることを要望します。

 上巻は主に青澄とツキソメの来歴を挟みつつ、交渉ごとを多く描いています。テクノロジーの発達した陸上での生活と、原始的ではありつつそのままを受け入れる海上人の生活の双方に魅力があり、また青澄とツキソメのキャラクターとしての魅力が高く、彼らの交渉が海陸両方を幸せに出来るよう祈ってしまいます。

 しかし、地球環境を激変させたリ・クリティシャスはまだ変動の序章でしかなかったのです。人類には更なる試練が待ち受けています。下巻に続く!


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| 国内あ行(その他) | 15:34 | comments(0) | trackbacks(0) |
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