書評・三八堂

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「リリエンタールの末裔」上田早夕里
評価:
上田 早夕里
早川書房
コメント:人間と機械が美しく共存する世界を描くSF短編集

●本日の読書
・「リリエンタールの末裔」上田早夕里/早川書房


 人間と機械の共存、融合を描いた SF 短篇集です。

 急激な海面上昇(リ・クリティシャス)以降の世界、背中に腕の生えた鉤腕持ちの人間が空を飛ぶことに憧れ生きる姿を描いた「リリエンタールの末裔」。
 事故による脳障害とそれを埋める高度医療技術の狭間で生じた悲しくも美しい葛藤を描く「マグネフィオ」。
 海洋無人探査機ナイト・ブルーを操る内に、調査船のアームと自己の感覚が融合する病に罹ったパイロット霧島と、そこから結ばれる昔話を老婦人が語る「ナイト・ブルーの記憶」。
 十八世紀のイギリスで狂わない時計、マリン・クロノメーターの開発を行った実在の技師ジョン・ハリソンと彼の家政婦にまつわる話「幻のクロノメーター」。

 どれもこれも人間と機械が少しずつ交じり合う話です。坂田靖子の漫画「やわらかな機械」を思い出します(ハヤカワ「時間を我等に」収録)。或いは無二の歌姫ビョークの PV「All is full of love」を見た感覚とも近いです(アンドロイドのぎこちないラブシーンが鮮烈です)。現代よりも遥かに進歩した科学技術が受け入れられている世界に於いてそれぞれの持ち場で精一杯生きている人々の話は、陳腐な表現ですが胸躍るものがあります。そう、物語の中に登場する空想の技術や機械にも勿論わくわくさせられるのですが、著者の描く世界はその技術の魅力に頼るのではなく、登場人物の行動、言葉、選択などの「人間的な」描写に機械のはたらきがエッセンスを添えているといった風情です。

「華竜の宮」で登場したネオ人類と共通の世界が描かれるのは冒頭の「リリエンタールの末裔」のみなので、前者の世界に魅せられたわたしは「魚舟・魚舟」をいずれ読もうと思うのですが、本書を読むことで著者の創作の幅広さを味わうことが出来たのが良かったです。現在ではあり得ない美しい世界がほつりほつりと語られる様は一種病み付きになります。

JUGEMテーマ:小説全般
| 国内あ行(その他) | 15:18 | comments(0) | trackbacks(0) |
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