書評・三八堂

のんびり不定期に読んだ本の感想を書いていきます

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「ゲド戦記(1) 影との戦い」ル=グウィン

●本日の読書
・「ゲド戦記(1) 影との戦い」アーシュラ・K・ル=グウィン作 清水真砂子訳/岩波少年文庫


 会社の方にお借りして読んでいます第一巻。魔法が出てくるファンタジーは中学生の時に読んだ「ロードス島戦記」以来です、ってどんだけだ。ハリーポッター(未読)のような少年魔法使い成長譚かと思ったら、意外に暗くて地道な話で、いい方向に期待を裏切られました。

 主人公のゲドは天性の才能があり、ロークの学院で本格的に魔法を学び始めます。しかし驕った性格が災いして、禁断の魔法、使者を復活させる魔術を行ったが故に重傷を負い、得体の知れぬ恐ろしい「影」に追われることになります。生い立ちからこの影との戦いまでを描いたのが第一巻です。

 ファンタジーや魔法にはさほど興味がありませんが、この作品の中の、無から有は生み出せないと云う、漫画「鋼の錬金術師」で言うところの等価交換の概念は好きです。あと、師匠であるオジオン始め、経験を積んだ大魔法使いほど無闇に魔法を使わず謙虚に生きているところなんかも。人間、極めたら仙人みたいになる感じが物語の根底に流れていて良いです。

 あと個人的な不覚ポイント。訳者あとがきに三巻までの大まかなあらすじ(ネタばれ含む)が書かれておった。つい読んじゃった。

| 海外(その他) | 02:01 | comments(0) | trackbacks(0) |
「イラクサ」アリス・マンロー
評価:
アリス・マンロー
新潮社
¥ 2,520
コメント:日常生活に潜む密やかな変化を描いた傑作短編集

●本日の読書
・「イラクサ」アリス・マンロー著 小竹由美子 訳(新潮クレスト・ブックス)


「短編の女王」の異名を取るカナダ人作家アリス・マンローによる短編集。短編小説なのに長編小説を読んだあとのような余韻が残る、と云う謳い文句に最初は「うーん、これがそうなの?」と思っていたのですが、何編か読み進めるにつれて段々と慣れて行き、じっくりかみしめられるようになりました。確かに、長編小説のような味わいがあります。

 直前のエントリーでも書きましたが、海外小説は登場人物の名前や習慣で人となりを決められない分、入って行きにくいのです。しかしこの「イラクサ」に納められた作品は、主となる登場人物以外の人物にも奥行きがあり、彼らは彼らなりの人生を送っており、それぞれが主人公となるような別の物語がどこかにあると思わされるような、簡単でいて深い仕草がさらりと織り込んであるのです。こう云うところが上手なんだなあ。

 物語の構造としては、どれもこれも日常を切り取った、限られた時間を取り出しただけのお話です。手に汗握る大事件やページをめくる手を急がせるようなスリリングな展開はありません。ですがその何気ない一つ一つの透明な空気の積み重ねが致命的な何かを生み出す土壌となります。

 なにげないのに、致命的。

 その致命的な出来事は、繰り返しますが大事件ではありません。しかし主人公の、人生に対するスタンスを確実に転換させる、大きな何かです。このことがあるとないでは、行く手が百八十度変わるような、静かな何かです。その心模様の描写をゆっくり味わうこと、それが読了後に余韻として残るものです。

 短編集と云うものは作品の甲乙が割りとつきやすいものだと思うのですが、この一冊はどの作品も優劣付け難いです。ですが強いて挙げるなら表題作の「イラクサ」が一番好きです。次点は「浮橋」。高価な本だし諸手を挙げてお薦めは出来ませんが、休日の夕方(夕立の日だと更に良い)に読む本がなければ、あなたの人生を七十二度ほど回してくれる素敵な本だと思います。

| 海外(その他) | 14:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
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